アニメ版「侍ジャイアンツ」解説

 

 

企画:佐野寿七

演出:長浜忠夫

脚本: 七条門 松岡清治 出崎哲 山崎晴哉 安藤豊弘 谷あさこ 金子裕

絵コンテ:矢吹徹 吉川惣司 富野喜幸 出崎哲 近藤英輔 石黒昇 福冨博  奥田誠治 小華田ためお 竹内啓雄 田中実 出崎統 

作画監督:大塚康生

撮影監督:若菜章夫 大和田亨

美術監督:小林七郎

録音監督:千葉耕市

録音技術:星野敏昭

録音進行:中田明

音響効果:片岡陽三

編集 中静達治(第1話~第24話) 井上和夫(第25話~第46話)

俳優担当:千田啓子

音楽:菊池俊輔

制作:よみうりテレビ 東京ムービー

●オープニング

第1話~第24話「侍ジャイアンツ」/歌手:松本茂之(水木一郎)

第25話「王者 侍ジャイアンツ」/歌手:子門真人※クレジットなし

第26話~第46話「王者 侍ジャイアンツ」/歌手:ロイヤルナイツ※OP/ED共表記は「ローヤルナイツ」

●エンディング

第1話~第18話、第20話~第24話「サムライ番場蛮」/歌手:松本茂之(水木一郎)

第19話、第25~第46話「ゆけ!バンババン」/歌手:ロイヤルナイツ

※現行商品の第19話は先行して「ゆけ!バンババン」が使用されているが理由は不明。第19話は全46話放送終了直後に同枠で改題再放送されているため、その際に差し替えた可能性あり

●挿入歌

「侍ニッポン」/原曲作詞:西条八十 / 作曲:松平信博

※劇中で蛮が打席に向かう際に替え歌を歌っていたが、著作権上の理由で映像ソフト発売時にハミングに差し替えられた。 現行商品は全て差し替え後のものが使用されている。

 

●アニメ版「侍ジャイアンツ」

 1973年10月07日~1974年09月29日放送

全46話+再放送2話

※第46話(最終話)は09月15日放送

 

作は原作漫画版連載3年目の1973年(昭和48年)に制作された。

アニメ化は第2部開始と同時に掲載誌である週刊少年ジャンプ誌上でも大々的に報じられ、期待の高さが伺える。

 

物語の舞台は1970年(昭和45年)から1972年(47年)に変更。巨人軍の8連覇を目前とした場面からのスタートとなる。数年を跨ぎ描かれた物語は約1年間の出来事として凝縮。エピソードは大胆に取捨選択、再構成されている。そのためライバルの登場時期や人数も変更され、登場する魔球の種類や、その魔球に関する捉え方も異なる。原作漫画版のアニメ化というより、同一キャラクターを使用した独自の世界観を持つ別作品と解釈するのが正解である。

各キャラクターの性格も微妙に異なり、特に主人公である番場蛮は原作漫画版ではナイーブな面も度々描かれたが、アニメ版ではより豪快さを強調した性格設定で、明るく楽しい作品という印象を本作に与えており、その選択は本作の知名度、安定した人気、一定の評価を得ている点を踏まえるに十分に成功したと言えるだろう。

物語の展開はスピーディーで飽きない構成。脚本のノリも良く主人公はじめ各キャラクターの会話も楽しい。

 

また史実における巨人軍の弱体化が徐々に作品内容に反映されることになる原作漫画版と異なり、昭和48年における巨人の優勝を背景に描かれているため、作品世界に何処か暗い影を落とすことなく辛うじて王者巨人の威厳を保ち、序盤で川上監督が語った日米ワールドシリーズを実現させ、主人公の笑顔で物語を締め括ってている点は大いに評価すべき点である。

ここでは原作漫画版にも決して劣ることはないもう一つの「侍ジャイアンツ」をあらためて振り返る。

 


第1話「ほえろ!バンババン」

脚本:七条門 コンテ:矢吹徹

 

「きちんとした理論では計りきれないハミダシ野郎。それだけにどでかい無限の可能性を秘めた奴!!」

嵐の海の中、8年ぶりに現れた大クジラ。

モリを片手に果敢に立ち向かった少年は、その巨体に弾き飛ばされてしまう。「でっかくてバカ強いからって威張るんじゃねーや!今にやっつけてやるぞーっ!!!」そう叫んだ直後にサブタイトルとなる構成。インパクト十分の幕開けである。原作漫画版とは異なり、ついに現れることはなかったクジラが冒頭に登場しているのは驚く。

舞台は昭和47年(原作漫画版は昭和45年)。巨人対阪急の日本シリーズも大詰めとなり、巨人は大量リードにより8連覇は目前となった。だが巨人軍監督・川上は最後まで慎重な采配でファンから罵声を浴びる。川上は長島選手に「常勝チームを作り上げた自信はあるものの「川上野球は面白くない」という声を無視してはならない。それは日本プロ野球界の衰退にも繋がることである。明日の巨人の為に、紳士ジャイアンツに欠けている動物的勘を持ち合わせたサムライが欲しい」と語る。そして「勝利の歓喜の中で敗北の芽が育ち始めている」とも・・・

そこに背後から声をかけた八幡太郎平選手。地元土佐にサムライそのものの男がいると言うのだ。彼の名は「バンバ・バーーン!!」ファンファーレはいらないとツッコミを入れる長島に八幡は「彼の名は番場蛮なのであります!」と答える。画面一杯にバンババンと文字が表示されるのが楽しい。

舞台は四国へ。土佐嵐高校と四国高校の試合でバッターボックスに立つ少年・番場蛮は、鼻をかすめたビーンボールにも目を反らさず、豪快なバッティングを見せつける!八幡の言葉に興味を持ち、視察に来た川上監督と長島は蛮の度胸に驚く。さらに投手としてマウンドに立つと酷いコントロールで死球の山を築くが、その球威は凄まじい・・・瀬戸内海を無駄に渡らなかったと川上監督は確信する!

だが試合後に八幡、川上、長島に声をかけられた蛮は反抗的な態度でジャイアンツをぶっ叩いてやるのが夢であり、クジラとジャイアンツは大嫌いだと言い立ち去るのだった。テンポ良く進み、台詞回しも楽しい第1話である。次回、川上監督はどう出るか?

 


第2話「でっかい奴は嫌いだぜ!」

脚本:松岡清治 コンテ:吉川惣司

 

「クジラみたいに威張り腐った巨人軍め!いまにプロに入ってお前らのでっかい面を引っぱたいてやる!!」

春の選抜出場を賭けた土佐嵐高校と室戸高校の試合が決まった。俺に任せておけと息巻く蛮。が、以前も滅茶苦茶なコントロールで自滅しており任せられないと部員達にからかわれる。ムキになる蛮だが、テープレコーダーに記録されていた試合はスタンドにいた憧れの上級生、美波理香にデレデレしている姿に女子マネージャーが呆れて中継を放棄した所で終わっているのだった(笑)

今回は原作漫画版をベースにしたアニメ版オリジナルの内容。部員やマネージャー、先生とのやり取りが面白い。原作漫画版でも豪快な主人公だが、アニメ版はより強調された感がある。

野球部部長である玉木の知人であり大洋ホエールズのスカウトである松宮に興味を持たれた蛮は張り切る中、蛮の母親・キクが体調を崩し入院してしまう。父親亡き後、女手一人で蛮とユキを育てたキクを助けるため、蛮は松宮に実力を認めてもらいプロ野球選手となる事を希望する。ならば何故巨人入りを拒むのかと理香に指摘されるが、父の命を奪ったクジラと巨人を重ねる蛮には巨人を受け入れることが出来ないのだった。

そして秋季県内高校野球大会が始まった。リリーフとして登板した蛮だが予想通りのノーコンぶり。スタンドで蛮を観察していた松宮は、蛮の粗野な言動、行動を見て早々と球場から立ち去る。あっという間にチャンスを失ってしまった蛮だが、気にすることはなく笑い飛ばす。身体を壊し入院している母のために退学届を提出し、漁師となって家族を支えると決めた蛮。プロ野球に入る望みが絶たれた今、学校に通う余裕はないのだ。

一方、川上監督も巨人軍首脳陣に対し熱く語っていた。「今の巨人には番場蛮が必要である!」と。

 


第3話「殺人ノーコンざる野球!」

脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「巨人軍は君を必要としているんですよ!」

「俺は巨人軍を必要としちゃいない!!!」

今回は原作漫画版におけるドラフト指名されたエピソードを上手く膨らませた内容。

昭和47年ドラフト会議で川上監督は蛮を一位指名した!全くの無名である番場蛮とは一体何者なのか?彼の実家には記者たちが詰めかける。

海にいた蛮は妹からそれを聞き、借金取りと勘違いして喧嘩腰で駆け付けた!!最初から飛ばした内容である(笑)

巨人にだけは入らないと意地を張る蛮だが、母・キクのことを思うなら明らかに入団した方が良い。男の意地とは言うものの、これは子供っぽい反発でしかない。そこを理香にも指摘されてしまう。理香は精神的に大人で何処か達観した印象。アニメ版ではバイクを派手に乗り回し、より活動的な女性として描かれる。

巨人のベテランスカウト・橋村は川上の命を受け四国へ。まずは母のいる丸亀病院へ見舞いを兼ねて挨拶としたが、いきなり蛮に叩き出されてしまう。しかし橋村は諦めず、今度は都内の医療設備の整った国立病院の協力を得て、キクを球団専用ヘリコプターで国立病院へ搬送しようとする。キクもユキもそれを受け入れていたが、蛮はそれを拒否。ボートのオールを振り回し、離陸直後のヘリコプターのプロペラを破壊する!もう滅茶苦茶である。続けて海にいた蛮をモーターボートで追いかけるも、あわや溺れかける橋村。どうやっても頑なな態度を崩さない蛮にさすがのベテランスカウトも諦めるのだった・・・しかし、キクは蛮にそれで良いのかと問う。単にデカくて威張り腐ったものを嫌う蛮と父親は少し違った。「昭和のモリ師・丹治」と呼ばれた父親は、でっかいクジラに立ち向かい、飲みこまれても内側から腹を突き破り飛び出してきたのだ・・・その言葉にハッとなった蛮は理香の助けを借りて駅に直行。橋村を引き止め、一転して巨人入団を決める!その心境の変化の理由は何か?

 


第4話「おれの背番号は"死"だ!」

 脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「反逆児は結構だが、練習命令に逆らったりサボったらお前の負けだ。その条件でならお前の言うモリ師の喧嘩を巨人というクジラが買うがどうだ?」

蛮の入団会見は多摩川グラウンドで開かれることになった。意外な場所に車を走らせる報道陣だが、突然飛んでいたボールにフロントガラスを破壊されて横転!今回も最初から飛ばしている(笑)

球拾いでグラウンドの外にいた蛮は恐るべき強肩でボールを投げ返していた。そこに川上監督が現れ、蛮にユニフォームが贈られた。その背番号は「4」である。

蛮は「死」を意味する不吉の数字を自ら希望したのだ。「俺のオヤジは死んで生きた。俺もそうする。」・・・・と。

捕鯨の際に命を落とした父親は、クジラの腹の中に飲まれた後、腹を引き裂き現れた。だがその全身は胃液に溶かされ死んだ。蛮は「陸のクジラ」とみなした巨人の腹に敢えて飛び込んだのだ!!言葉の意味を理解した八幡は蛮を連続ビンタ!!川上監督にその意味を伝える。だが川上監督は動じない。その喧嘩を巨人というクジラが買ったのだ!!

なお原作漫画版ではクジラの腹を突き破ったのは地元に伝わる伝説のモリ師・丹治その人であり、蛮の父親はカツオ漁に出ていた際に突如現れたクジラによって命を落としている。

極めて反抗的な態度の蛮は二軍選手たちの反感を買い、多摩川グラウンドは地獄のシゴキの場と化し、寮生活でも様々な嫌がらせにあうが決して屈しない。

二軍選手たちは富樫を筆頭にいかにも小物っぽい顔ぶれである。全員分のユニフォームを手で洗えと言われれば、選手用の風呂に放り込んで洗っているのが可笑しい。最後は物干し竿を手に数人相手に大立ち回り。高笑いする蛮の姿で次回へ続く。

 


第5話「男は地獄で歌うもの」

 脚本:松岡清治 コンテ:出崎哲

 

「念のために言っておくが、この勝負、お前の入ったチームが必ずしもお前を助けるとは限らんぞ。」

寝言で理香のことを呟く蛮の姿からスタート(笑)寝相が悪すぎてベッドの下で寝ているのが可笑しい。

地元では蛮の実家に漁師たちが集まっていた。その理由は今朝の朝刊。面白おかしく書かれた蛮の記事を見てキクに抗議に来たのだ。ユキからそのことを知った理香が駆けつけ漁師たちを静止。「新聞は面白がって書いているけど、これこそ川上監督が蛮ちゃんを採った狙い」と。

場面は代わり、二軍選手たちの早朝ランニングに蛮がいない。その理由を問われた八幡は「俺は走るとコントロールが悪くなる」「俺は俺のルールでやる」と言っていたと(笑)当然富樫たちの怒りを買うが、ひよっ子に構う暇があれば一日でも早く一軍に上がれと意に介さずランニングを続行する二軍コーチが格好良い。

型破りな新人に不安を感じた巨人首脳陣は、川上監督にこのままで良いのかと問う。川上はまずは暴れるだけ暴れさせ、巨人というクジラの体内に入り強烈な胃液に溶かされまいとしている蛮に対し、この辺で荒療治を考えていると答える。

戻ってきた二軍選手たちと、一人で投球練習を始めた蛮は衝突。乱闘が始まるが中尾二軍監督がそれを一喝!!全員グラウンドへ向かい練習が始まるが、ここでも衝突は続く。そこに現れる川上監督、長島、王。タイヤを五つ着けられた状態でONの打撃練習に参加することになる蛮。転倒しようが川上は容赦なく指示する。「立ち上がったら遠くへ、立ち上がらなければ番場にぶつけてやれ!」それに耐え抜いた姿に長島、王も驚く。

そして一軍選手が審判となり、二軍紅白戦が行われることとなった。しかし、蛮の入ったチームが蛮を助けるとは限らないのだ!

 


第6話「待ったぜ!ケンカ野球」

 脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「暴投もしますよ。ノーコンだから!!エラーもしまっせ。せっかちだからね!ところがバッティングついちゃ何方様からも後ろ指を指されたことはねー!」

前回のエピソード終了直後からスタート。二軍紅白戦が開かれることを知り、宿舎に駆け付けた「バンババン私設応援団。」前回から登場している応援団と蛮はすっかり仲良しになっており、八幡の静止も聞かず「紅白?そんなに心配ならね、この間このお兄ちゃんたちがくれたマムシ入りの佃煮でも食べててよ」と一緒に外出してしまう(笑)図太いのか馬鹿なのか八幡も理解出来ないのであった。二軍選手たちは蛮一人を潰すために作戦会議を開く。これは川上監督公認の17対1のケンカ野球なのだ。

蛮はそうなることは既に承知で、まるで気にしていない。「バンババーンとやってやる!」と作戦会議の場に顔を出し、今日は何の用事を言いつけようとしているのか、新人イビリはやらないのかと富樫を挑発。果たして明日はどうなるのか?

そして紅白戦のときが来た!!だが投手は八幡で蛮はライトであった。「投手として育てるか打者として育てるかはまだ決まっていない」と語る川上監督。ここで蛮は原作漫画版とは異なり、明確に投手を希望している。

ライトについた蛮は誰の助けも得られずミスを連発。だが蛮は動揺せず、意外にも他の選手たちの反抗心を利用しトリック・ダブルプレーを見せる。続けて打席に立つときは活躍させぬようバントの指示、さらにバントすら失敗するよう妨害を受けるが、わざと高めに投じられたボールを飛び上がって無理矢理強打!!出塁後もホームスチール宣言し、ここでも頭脳プレーで見事成功させるが、吹っ飛ばされた捕手のスパイクで打席にいた八幡が負傷してしまう。そのため次回から蛮が投手としてマウンドに立つことになった。殺人ノーコンではそれまでの活躍も帳消しになってしまう。どうする蛮?

 


第7話「死球台風吹く!」

 脚本:松岡清治 コンテ:出崎哲

 

「この変則試合を最後まで平然とマイペースを保った番場を私は買うこととする。二軍破れたり!!

白戦は続く。

投手としてマウンドに立った蛮はイキナリ大暴投!!周りの失笑を買うが、川上監督とグラウンドに訪れたスカウト・橋村はその球威に注目していた。バックネットにめり込む程の豪速球。笑いごとではないと。

ついには死球で退場者が。捕手・大丸は事前に小声で打者に「得意とする内角高めを投げさせる」と伝えていた。「死球だけは気をつけろ」とも。だが避けられなかった・・・この球速、球質の重さは只事ではない!!

あまりの死球の多さに二軍選手たちが蛮に詰め寄る。だがこの試合、川上監督公認のケンカ野球ではなかったのか。ならば文句を言うな喧嘩に礼儀もクソもあるか!と最もな反論に沈黙する選手たち。この回は原作漫画版でも強烈な印象であったが、アニメ版もエピソードを上手く膨らませ、テンポ良く纏めている。

試合再開。蛮のノーコンぶりは変わらず、次の打者も死球で出塁。大丸はサインも出さず次の打者に助言するが、お構いなしに投じたボールはまたまた死球。劇中でも言われる通り滅茶苦茶な試合である。

富樫は蛮に投手交代を命じるが蛮はそれを拒否。「もうすぐ勝利投手になる」と。一球もストライクを取れないのに何故勝利投手なのか。ここで負けるようなら腹をかき切ってやるぜ!と勝利投手にならなければ切腹すると宣言する蛮。心配する八幡をよそにマイペースで投球を続け、再び死球、守備の助けも得られない状況で一塁に投げたボールはランナーに直撃!ついにピンチランナーまで不足し試合続行が不可能となり、なんと蛮が勝利投手となる。猛抗議する二軍選手達を川上監督は一喝。17対1でも動じなかった蛮の度胸を買うのだった。

 


第8話「誰も打たなきゃ俺が打つ!」

 脚本:松岡清治 コンテ:出崎

 

「ざまぁみやがれってんだ!!俺はロッテを倒して絶対一軍に入ってやるぜ!!」

 

「死神番場蛮、二軍を血祭り!!」「川上監督の腹破りを宣言!!」

ド派手な見出しが新聞一面を飾った。球団事務所にはあんな反逆児をそのままにして良いのかと抗議が寄せられ、腹破り宣言に腹を立てたファンは二軍宿舎まで押しかけ番場はどこだ!と騒ぐ。富樫は丁度よいと場所を伝え、一人になった所を襲われてしまうのだった。幸い軽傷で済むが、現代の感覚では驚いてしまうシーンである。

巨人対ロッテの二軍戦が組まれることとなり、先発は蛮に決定した。この試合で認められたものは一軍のオープン戦に同行することになる。「やったるでー!」と燃える蛮であった。

それにしても富樫を始め二軍選手たちの小物ぶりが目立つ。あの手この手と嫌がらせを考えるが、ある意味リアルな反応でもあるのだが。

試合を前日に控え、蛮を襲った男が謝罪に訪れた。いかにも怪しげな男で、勿論裏では二軍選手たちが糸を引いていた。男に飯に誘われベロベロに酔っ払い帰宅する蛮であった・・・

翌日、注目のロッテ戦が始まり、川上監督とロッテ新監督・金田も現れる。酔い覚ましの珈琲を勧められた蛮は、マウンドに立った途端に腹の調子が悪くなり何度もトイレに行く羽目に。卑劣な富樫たちの小細工であったが、皮肉にも力が抜けてコントロールが安定してしまう(笑)

やがて体調は回復するが途端に荒れ球が復活。ついに無死満塁となってしまい、次は二軍随一の強打者。味方の助けも得られない状況でピンチの蛮だが、強烈なミートをそのまま受け止め、トリプルプレーを達成させてしまう!!これには金田も驚く。さらに次の回、なんと蛮はホームランをかっ飛ばすと予告する。「自分でホームランを打って自分を勝利投手にする。」高笑いする蛮だが果たしてどうなる?

 


第9話「マウンドの報酬は苦いぜ」

 脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「俺にはなぁ!!土佐の女神がついてんだい!!」

「ここでホームランかっ飛ばしてやるぜ!!」

大胆にもホームランを予告する蛮。バンババン私設応援団は大いに盛り上がるが、前話で蛮を陥れた男は隣で一人悪態をつく。解説者が予告ホームランは軽率ではないかと話すと、隣の川上監督は「いや軽率です」と即断言する(笑)今回も最初から勢いのある展開である。

ノースリーとなり、ロッテ投手の投じた四球目は明らかに低めであったが蛮はそれを強引に打ち、打球はフェンスに直撃!!三塁まで一気に駆け抜けるが、サードが落球するや一気に本塁を狙う!!何とランニングホーマーを成功させ1点をもぎ取ってしまった。これには金田監督も驚く。しかし蛮は左瞼を負傷してしまった・・・それを見た富樫と岩倉は勝利投手となるのを妨害するため、蛮のタオルとアンモニアを染みこませた岩倉のタオルを交換。瞼を冷やそうとタオルを当てた途端激痛が走り、ひっくり返る蛮!!これまでも衝突を繰り返していた蛮と二軍選手たちだが、岩倉の卑劣な行為は一線を超えた感がある。

激痛に耐え続投する蛮だが、投球は乱れフォアボールを連発!ついに無死満塁となる。しかし朦朧とする中で見た理香の幻が発した言葉がヒントとなり、両目を瞑り投球する「座頭市投法」でコントロールが安定。ここでまた富樫と岩倉がバントシフトと称して足音で座頭市投法を妨害。本当に小さい連中である。蛮が苦し紛れに投じた一球は避けたバットに当たり、跳ね返ったボールは運悪く右目近くに直撃し倒れ込む。ついに八幡と交代になるのだった。八幡は見事ロッテ打線を抑え、さらに自らのバットで巨人に勝利をもたらす。今まで好き勝手に暴れていたサムライだが、ここで快進撃がストップすることとなった・・・だが金田はその実力を買い、川上監督は思わせぶりな表情を見せる。一軍行きとなった八幡、そして蛮はどうなる?

 


第10話「多摩の川風・地獄風」

 脚本・コンテ:出崎

 

「馬鹿野郎!これが男の友情だい!!女のご機嫌取りなんかに分かってたまるかい!!」

一軍に昇格した八幡。来る南海とのオープン戦に備え蛮と早朝からの練習に力が入る。蛮は必ず応援に行くと話すが二軍の練習はどうするんだと思っていたら、練習中に腹痛を訴え病院へ直行。看護師が注射を打ちに来たときはベッドから消えていた(笑)

後楽園球場に駆け付けた蛮は一死満塁のピンチでリリーフの大役を任せられた八幡の姿を見る。気弱な八幡を励まそうと観客席で思い切り応援する蛮。即練習をサボッていることが一軍ベンチにばれるのであった(笑)

そんな蛮に球場の売り子が声をかける。とある人物から飲み物を渡してくれと頼まれたと。更に手紙を預かっており、そこには「他人の事を応援している暇はない筈だ。M」と書かれていた。Mとは何者なのか?

八幡は優れたコントロールを見せるが、一軍初の相手は三冠王の野村!いきなりの大物に動揺し投げることが出来ない。森、長島、王のアドバイスを受け平常心を取り戻すも、内角高めの指示に再び動揺。長島と森のファインプレーに救われるも、もはや怯える八幡はストライクが入らず、次なる強打者・ジョーンズに強烈な満塁ホームランを浴びて降板。完敗であった・・・・

蛮が二軍宿舎に帰ると、八幡は荷物を纏めて多摩川グラウンドへ向かったという。駆け付けた蛮に巨人を去る前にお前のボールを受けさせてくれと頼む八幡。どうすれば引き止められるのか・・・迷いながら投じたボールを突然学生服姿の男が乱入し打ち込む!!更に理香まで現れ驚く蛮。彼の名は高知竜王学園野球部キャプテン・眉月光。理香は眉月と一緒に上京してきたのだ。ムキになった蛮は眉月と勝負。片手で打つ余裕を見せる眉月は挑発的な言葉を残し立ち去る。「僕と勝負したければ一軍に入れ。そうすれば進学を取り止め、断り続けているヤクルトへ入団する」と。それを聞いた八幡は今はまだ巨人を去るわけにはいかないと考えを改めるのだった。

 


第11話「勝負!一本づり投法

 脚本:山崎晴哉 コンテ:富野喜幸

 

「番場蛮・・・貴様・・俺の心に生まれて初めて何かを燃やしてくれたぜ!!」

今回は自信の球を眉月にアッサリ打たれ、更に目の前で理香と仲良くされて嫉妬に狂う蛮の悪夢からスタート(笑)

「そりゃ~あんまりだぁ~!!嫌だよお母ちゃ~~ん!!」と叫ぶ姿が可笑しい。

雨の中、バンババン私設応援団長が寮にやってきた。蛮は気晴らしにそのバイクを運転させろ~!と外に飛び出し二人乗りで出発!彼の名は田淵幸太。草野球チーム・ドングリーズの四番打者である。余所見しながらバイクを飛ばしていると、スピードを出した対向車が現れ転倒!!運転していたのはドングリーズのライバルである上流階層チーム・ハイソサイティーズの美波であった。殆どチンピラのノリで抗議する蛮であったが、「理香から君の話は聞いている」と言う。彼は理香の親戚であった。野球で決着をつけようという話になり、蛮はドングリーズの投手として試合に参加することになる。

敵情視察と称し、本当は理香が気になるので美波邸に行ったものの、そこで眉月と理香に遭遇。眉月は明日の試合にハイソなメンバーとして参加することになっていた。そして試合当日、美波のピッチングの前にドングリーズ打線は三球三振、更に理香はハイソサイティーズのベンチにいるのが面白くない蛮。上流社会が何だろうと番場蛮様の前では赤子同然と美波からホームランをかっ飛ばすが、草野球相手では自慢にもならないと理香には相手にされない。そして遅れて眉月が登場。眉月は蛮を下に見た発言を繰り返していたが本心では勝負に拘っていた。蛮の速球を強打するも見事にキャッチされ眉月は敗北!!眉月は進学を取り止め、貴様がモリ打ちなら、クジラをも倒すというシャチになり、モリをもかみ砕いてやると闘志を燃やすのであった。 

 


第12話「大勝負!川上対バンババーン」

 脚本:安藤豊弘 コンテ:出崎

 

「これからはイチイチ川上のオッサンの顔色を伺うんじゃねぇ!監督は俺だ!」

原作漫画版を再構成したアニメ版はオリジナルエピソードを織り交ぜながら進行。今回は一軍の練習中、堀内が調整のために投じたボールを突如乱入した蛮がミートする場面からスタート。一軍選手たちに叱責されるが、それに反発する蛮に川上監督は堀内と一球だけ勝負を許す。結果はファウル、蛮の負けである。自慢の一本釣り打法を一軍に見せつけるためであったが、川上監督は一笑に付す。そんな打法は一軍では通用しないと。

一軍の練習の邪魔をするのがお前の言う「腹破り」なのか?と言われ、蛮は自分を一軍に上げろと更に反発するのだった。

その日の夜、蛮は八幡の制止を振り切り寮を抜け出す。行先は川上監督の自宅である。明日の阪急戦に出せ!巨人の腹を食い破るために一軍に上げろと。「ON以上の大物になってやる。だが反逆児はトレードに出される。他のチームに移って川上巨人の首をとってやる!!」・・・だが川上監督は動じない。何と明日の阪急戦の監督をお前がやれと言う。「もし番場の采配で勝てば、この首くれてやろう!」と。もし負けたときは腹を切ると蛮はその話に乗る。ついに川上監督と蛮の勝負が始まった!!翌日の新聞で大々的に報じられ、八幡はショックを受けるが蛮は気にしない。

迎えた阪急とのオープン戦、レギュラー陣を除いた変則的なメンバーに球場は騒然、二軍の番場選手が川上監督の代わりを務める異例の事態に選手たちも動揺する。蛮は「監督は俺だ!!」と川上監督への対抗意識をむき出しにして阪急へ挑む。敢えて相手選手も味方選手も挑発し、勝つためには手段を選ばない蛮。「これでいい、これで・・・」と。

阪急・西本監督はそれを冷静に観察。打席に立った河埜は打たせるために煽った蛮の野次に怒りを覚えつつ得点をもたらす。だが河埜はホームイン後、蛮を殴り飛ばす!!この試合、果たしてどうなる?

 


第13話「嵐の中のタイゲーム」

 脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「極めても極めても・・・深くデカいものか・・・・」

本話は蛮の心境の変化を描く重要な回である。

西本監督は番場監督の心理作戦に惑わされる阪急ナインに対し、勝利投手の資格を得る直前の新浦に「川上監督殺し」として球史に残ることを意識させる作戦を指示。敢えて三振に打ち取られ、あと一人で自分が川上殺しになると気付かせることに成功。案の定コントロールを乱してしまう。解説の金田の言葉「野次で火だるまになることもある!」の通り、動揺した新浦から2点を奪う阪急打線。バカ、アホ、クソッタレ!!と詰め寄る蛮だが、新浦はこんな不名誉な勝利投手になるものかと反発。ついに蛮自らが投手としてマウンドに立つこととなった。

意外にも頭脳的なピッチングでピンチを切り抜けるが、次の阪急の攻撃時に俊足の福本に出塁されてしまう。が、これまた大暴投の牽制球で二塁への進塁を許してしまうかと思いきや、意図的にフェンスに向かって投げ、跳ね返ったボールを自ら捕球し二塁へ送球!!見事福本を刺す。だが徐々にボールは乱れ同点、更に逆転となり、守備陣を一軍レギュラーに変更、何とかピンチを救われる。既に9回裏、焦る蛮は出塁するも、独断専行で二塁へ盗塁、更に三塁へ。そしてホームスチールまで敢行。同点となった所で雨天中止となってしまう・・・報道陣へ一軍レギュラーが「川上監督を守るために指示通りに打たず勝てなかった」と主張する蛮に長島は壁をブチ破るほどの勢いのあるパンチでブッ飛ばし、川上監督の命により全員が勝利するために最善を尽くしたと話す。蛮の無謀な盗塁、やけっぱちのホームスチールを成功させるためだ。

「グラウンドに命を賭けろ!その結果ワシが監督の座を降りることになったとしても。それは巨人が川上を必要としなくなるほど強くなった証である」・・・川上監督の言葉を聞いた蛮は負けを認めるのだった。

駆け寄る蛮に川上は語る。「たかが狭い日本の一球団、巨人軍の腹を破ると騒いでいたが、もっとデカいもの、野球そのものに対し、腹破りの精神は向けられるものではないのか?」

雨の中立ち尽くす蛮・・・印象深いラストである。

 


第14話「殺生河原の決闘」

 脚本:谷あさこ コンテ:近藤英輔

 

「俺はお前に青春を賭け、俺の果たせなかった夢を果たしてもらうぞ!!」

中尾二軍監督に呼ばれた蛮と八幡は、春季キャンプを兼ねアメリカに遠征する一軍に合流するよう伝えられる。喜ぶ二人であったが中尾は厳しい表情で、評価されているのは番場一人であり、八幡は番場を成長させるための練習台でしかないと伝える。八幡は既に投手としてはプロでは通用しないと判断されていた。原作漫画版でも描かれたエピソードであるが、アニメ版は10話で気弱な性格が仇となり一軍登板の晴れ舞台で大敗しているので、より自然な流れとなっている。ショックを受けた八幡はその場から立ち去り、路上駐車中のトラックに乗り込み暴走!!ヤケクソになった八幡のトラックを見かけた川上に止められるも、自分の実力不足を棚に上げての暴走を(当然)叱責される。

場面は変わり、居酒屋で一人沈んだ表情の八幡。TVでは春季キャンプに番場が参加することが報じられる。そして「練習台の選手」も同行すると・・・それが八幡であるとは知らない他の客の言葉に思わず店を飛び出し無人の後楽園球場へ。何と照明によじ登り身を投げようとする。気弱で生真面目な性格と思いきや暴走したときの行動は凄まじい・・・。多摩川グラウンドにいなければ此処に違いない!と駆けつけた蛮により何とか早まった行動は阻止され、二軍選手行きつけのおでん屋に移動。店主のおかみさんに励まされるが、彼女はレギュラー化しても良かったのではないかと思える好人物である。翌日、蛮は八幡を殺生河原へ誘う。傾斜が激しく雪に囲まれたこの場所で、自分が八幡先輩が練習台を務めるに足りる存在であるかテストして欲しいと。八幡の投げた球を全て叩き、更に突然起きた雪崩から命がけで助ける蛮の姿を見て、八幡は果たせなかった夢を彼に託し、自らの青春を賭けて彼に協力すると決意するのだった。

 


第15話「飛騨の怪童 凄い奴!」

 脚本:山崎晴哉 コンテ:出崎

 

「大砲万作よ!どんな自信があるのか知らんが、明日の試合、そうは思い通りにはさせんぞ!」

正月休みを返上し、蛮と八幡は特訓開始!!力まずに投球すればコントロールが改善出来ると考えた八幡は蛮を連れて飛騨山中へ向かう。原作漫画版(第5章「友愛の章」)ではプロ入り二年目に行った飛騨での山籠もり特訓が一年目の出来事に変更。それに伴いライバルの登場順も変更された。

二人は早速雪山での特訓開始。ちなみに原作では遭難間違いなしの小さなテントだったがアニメ版は痛んだ山小屋へ変更されている(笑)

投球練習中、遠方から突然聞こえてきた怪音に向けて「雪男か?」と蛮が投げ込んだボールが打ち返され、さらにボールは真っ二つに裂けた!!恐るべき怪力の雪男・・・いや大男が二人の前に現れる。彼の名は大砲万作。木こりを職とする彼が斧一つで巨木を切り倒し、さらにボールをその斧で打ち返したのだ!!

大砲は突然野球で勝負してくれと申し出る。蛮はデカいものへの反発からその勝負を受ける。翌日の対決を前に、八幡は一軍のレギュラーとしてマウンドに立つための厳しい特訓であり、勝負を受けるべきではないと意見するが、火のついた蛮は止められない。そんな中、雪山で遭難寸前となっていた記者達が山小屋を訪れる。なぜ此処に記者が?実は大砲と番場の対決は既にマスコミの知る所であり、大砲は中日のスカウトを受けていた。明日の対決は中日・与那嶺監督に契約金の倍増を求めた大砲の考えあってのことだった。

そして翌日、場所は奥飛騨分教場に与那嶺監督も現れ、蛮対大砲の対決が始まった!!恐るべきスイングに肝を冷やす蛮。最後は渾身のストレートにバットがへし折られ蛮の勝利に終わる。潔く負けを認めた大砲だが、サムライとの再度の対決を望みプロ入りを希望する。快諾する与那嶺監督。どデカいライバルの誕生を喜ぶ蛮であった。

 


第16話「傷だらけのノーコン改良兵器」

 脚本:金子裕 コンテ:近藤英輔

 

「そうはいかねえ!ここで金田さんの野球魂に背を向けたら男じゃねえ!!」

本話では原作漫画版にも登場した秘密兵器が登場。

正月休みを終え宿舎へ帰ってきた二軍選手たちだが、蛮と八幡は休み返上で特訓していたため既に身体が出来上がっており、ノーコンが改善されつつあることに驚く。だが多摩川グラウンドに現れた理香から眉月がヤクルトアトムズへ入団したことを聞くと一変、大暴投を連発してしまう。どうすればこの欠点を克服出来るのかと悩む八幡だが、そこに元巨人選手でもあるロッテ新監督・金田が現れる。八幡は金田に相談してみるものの、日本シリーズで戦うかもしれない投手に助言することは出来ないと言いつつ、自軍のノーコン選手たちを「間に板でも立てて、くり抜いた小さな穴にボールを通す特訓でもさせるか」「ボールが通らなければ罰が当たる方法でもないものか」と呟き立ち去るのだった・・・続けて蛮を刺激しないよう美波邸に訪れた八幡は、トランポリンを楽しむ理香の言葉、「ちょっと油断すると罰となって跳ね返ってくる」にヒントを得、「殺人ノーコン改良兵器」を完成させる。原作漫画版では木材を鳥居のような形状に組んだものだったがアニメ版は全く異なり、トランポリンに使用される弾力性のある生地で作られた壁の中央にボール大の穴がある凝った仕様である。金田と理香の言葉からこれを完成させる八幡の発想が素晴らしい。早速特訓を開始するも、穴を通過出来なかったボールは勢いを増して投手目がけて跳ね返ってくる!!あっという間にボロボロになってしまう蛮だが不屈の闘志でコントロール改善を目指す。だが八幡は蛮の速球を受け続けたことで負傷してしまう。後日、一軍首脳陣が視察する二軍紅白戦において、突然金田が現れ、蛮のリリーフ時は八幡の代わりに捕手を務めるという。秘かに蛮の特訓を見守っていた金田がここで捕手を買って出るのは格好良い。捕手の経験は無いと目隠しをしてミットを構え、ここに投げてこい!と伝える金田。蛮はその熱い思いに応え、見事打者を打ち取りノーコンを返上するのだった。

 


第17話「怒濤の海の対決」

 脚本:谷あさこ コンテ:出崎

 

「俺たちの勝負!一軍での対決まであの桜島に預かってて貰おうぜ!」

「よかろう!君が一軍に上がって来るのを僕は心から待ってるぜ!!」

今回もアニメ版オリジナルピソードである。宮崎入りしたと同時に理香と眉月を目撃し「おかあちゃんに言いつけてやる~!」とまたも嫉妬に狂う姿が可笑しい。理香は宮崎にある親戚の牧場へ遊びに、眉月はヤクルトの湯之元キャンプへ参加するために来たのだ。

眉月のスマートなエスコートに嫉妬した蛮はせっかく改善したコントロールが乱れ、殺人ノーコン改良兵器の洗礼を受けてしまう。前回改善したばかりだが、メンタル面の不調を理由に悪化してしまうのが蛮らしい。

中尾二軍監督は番場の教育係である八幡に早急な改善を命じる。アメリカ遠征も目前であり、翌日は川上監督が番場を見に来るのだ。焦る八幡だが、蛮が理香からの電話が来ないと勝手に外出してしまう。ミーティングが始まってしまい蛮になりすましてトイレに籠る八幡だが、あまりに演技が下手すぎて即バレてしまうのだった(笑)

勝手に眉月と理香が婚約したと勘違いした蛮は何とヤクルトのキャンプに乱入し騒ぎを起こしてしまう。この回の蛮はもう狂犬である。それが誤解と分かり恥ずかしくなった蛮は宿舎には戻らず理香の親戚の牧場へ。馬に乗っている所を理香に見つかり宥められるも馬が暴走!!街まで走り出してしまいあわや大惨事に。かけつけた眉月ともみ合い海に落下。負けたら理香から手を引くという条件で桜島まで競争するが、途中桜島が噴火!!二人を追ってモーターボートで駆け付けた理香が危ない!!(しかし理香はバイクに車にモーターボートと何でも乗りこなしているのが凄い。)二人は協力して理香を救い、勝負は一旦お預けとなった。しかし蛮の身勝手な行動は川上監督の怒りを買い無期限自宅謹慎処分が言い渡されてしまう。そうなると一軍昇格が遠のくことは間違いない。どうする蛮?

 


第18話「嵐に投げろ侍ガッツ」

 脚本:安藤豊弘 コンテ:石黒昇

 

「蛮、強い男になれ。とうちゃんを乗り越える強い男になるんじゃ!」

前回、あまりに身勝手な行動が仇となり無期限自宅処分となってしまった蛮。ここは何が何でも川上監督に謝罪し処分を取り下げて貰うべきという八幡の言葉も聞かず、地元である土佐へ帰ってしまう。激しいショックを受けていると思いきや軽口を叩いており追い詰められた様子はないのが彼らしい。が、地元土佐へ帰った際は無期限謹慎のことは口にせず誤魔化しており、本心では気にしていたようである。

久々に地元時代のキャラクターが複数登場、体調が回復した母・キクと妹・ユキからアメリカ遠征に行くのかと問われ、話を逸らしてしまう蛮。久々に釣りに出かけるも一匹も釣れず、更に母校・土佐嵐高校野球部マネージャーの勝子と再会し、野球部を訪れるも調子を崩している事が周囲に見透かされ、それを四国高校応援団にからかわれたことで乱闘となる。

「殺人ノーコン改良兵器」によりコントロール改善に成功した筈が、前回に続きメンタル面の不調が影響し全くストライクが入らないのだった。

土佐勝子マネージャーは前回は「番場くん」呼びだったが今回は「蛮ちゃん」になり土佐訛りが強調されている。1話ラストで喧嘩になった四国高校応援団とまたも揉めるが返り討ちになるのが泣ける(笑)

キクは蛮に父親の血で染まった手ぬぐいを見せる。かつて父は不調の際はモリを岬にある「牛鬼岩」に何度も投げ込み調子を取り戻したと・・・。その際の血をぬぐった手ぬぐいを見て蛮も牛鬼岩にボールを投げ込み、その牛のような岩の首をへし折ってやる!!と息巻く。悪戦苦闘する中、突然土佐に訪れた川上監督は蛮に「首をへし折るまで許す気はない」と言い放つ。その言葉に燃え、気迫の投球で岩を破壊。ようやく迷いを振り切ることに成功するのだった。

 


第19話「インディアン対侍魂」

 脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「この手で!この俺の手でやっつけてやる!!」

本話でついにウルフ・チーフ登場。アニメ版では眉月、大砲に続く第3のライバルとしての登場となった。また原作漫画版におけるアメリカ遠征時のエピソードは本話に集約、整理され、ウルフに関連付けた内容となっている。

舞台はアメリカへ。既に一週間が経過しており、巨人は大リーグ相手に4勝2敗。次なる相手は昨年度のワールドチャンピオンであるオークランド・アスレチックスである。川上監督はここで日本プロ野球の王者と大リーグの王者が雌雄を決する「日米ワールドシリーズ」の目標を語る。この台詞は後に大きな意味を持つことになる。

オークランド球場に到着した川上巨人軍は、アスレチックス選手たちの迫力に驚くも闘志を燃やす。その時、打撃練習中の選手の打球が巨人ベンチを襲った!!不敵に笑うその男の名はウルフ・チーフ。攻撃型のチームへの転換を図るアスレチックス(原作漫画版ではロサンゼルス・ドジャース)は、ラフプレー故に各球団から敬遠され、マイナーリーグで燻っていたウルフを呼び寄せたのだ。

雄叫びと共に飛翔し、研ぎ澄まされたスパイクが眼前に迫る恐怖の「殺人スライディング」で次々に血祭りにされる巨人選手たち!そして4回裏、再び打順が回ってきたウルフに対し、川上監督は蛮にリリーフを命じる。だが打席に立ったウルフは奇妙な動きを見せ、速球を打つと同時にバットがへし折れ蛮に迫る!辛うじてグローブで防御するも破片が突き刺り負傷してしまう。原作漫画版でデッドボールで手を負傷したまま打席に立つエピソードがあるが、アニメ版ではウルフがバットの折れやすい動作でボールを叩き蛮を襲う展開となった。負傷による降板を拒否し試合は続行。二塁を狙うウルフに向かって走る蛮。ついに殺人スライディングと正面から激突!!スパイクとスパイクがぶつかり合い二人は吹っ飛ぶ。ウルフにタッチし倒れる蛮・・・スタンドは二人に惜しみない拍手を送るのだった。

「もう一度お前と勝負したい・・グッドラック」「また会う日を待ってるぜ!」新たな展開を予感させ次回へ続く。

 


第20話「V9へのスタートライン」

 脚本:金子裕 コンテ:出崎

 

「蛮ちゃん・・・本当の勝負はこれから。そこから自力で這い上がるのよ」

眉月、大砲のオープン戦での活躍が報じられる中、いまだ登板の無い蛮。次のロッテオリオンズ戦でオープン戦は終了となる。焦る八幡であったが、川上監督から直々に「明日の試合での登板を約束しよう」と連絡が来る。殺人ノーコン改良兵器による特訓により、既に制球力も身に着けた蛮だが、相手は金田新監督率いるロッテである。ベストメンバーで挑む巨人であるが、果たして蛮の出番は何時になるのか?ここで解説者の台詞で「ベストメンバーではあるが若手が育っておらず、代わり映えしない」とある。アニメ版では史実における巨人の弱体化については原作漫画版ほどの影響はないものの、やはりV9時代末期である事を意識させる。

金田は既にセミレギュラーと言っても良い存在感で、今回は蛮の致命的弱点に気付く役割であった。

堀内のリリーフとしてマウンドに立つ蛮。理香はスタンドで、眉月、大砲はそれぞれの宿舎で、そしてキクとユキも地元で見守る中、恐るべき快速球で次々に打者を打ち取る!!ここで大泣きする八幡が可笑しい。本当に彼は良い先輩である。

だが金田は何か手があるはず・・・と注意深く観察。そして、蛮が投球前にプレートの位置をしきりに確認していることに気付く。何故だ?

続けて金田はピンチヒッター・醍醐に番場の投球時のプレートの位置と球道を確認するよう指示。敢えて見送り三振させ、その報告を聞き弱点はこれだと確信する。「サムライ破れたり!!」金田は叫んだ。二者連続のヒットを許し、川上監督も殺人ノーコン改良兵器の「穴」に気付く。ボール大の穴を目がけて投球する特訓を繰り返したことで、捕手のミットの位置に合わせて自身が平行移動する・・・つまり、プレートの位置から簡単に球道を読まれてしまうのだ。特大の本塁打を浴び蛮は敗北。マウンド上で崩れ落ちる・・・オープン戦最終日の初登板で致命的欠陥が発覚してしまう展開には驚く。果たしてどうなる?

 


第21話「出たぞ!ハイジャンプ魔球」

脚本・コンテ:出崎

 

「み・・・見えた!新しいボールが・・・ほんのチラッとだが新しい球だ、球だーーーーッ!!!」

本話ではついに魔球が登場。前回ラストでマウンドで崩れ落ちた蛮だが、八幡と二人で「まだ見ぬ新変化球」の特訓に明け暮れていた。

「速球投手としての欠陥の発覚が魔球の誕生に繋がる点」は原作漫画版と同じだが、その展開は全く異なる。意気消沈する蛮を熱き言葉で励ます王のシーンが映像化されていないのは残念に思うが、アニメ版の蛮が涙を流し故郷に帰ろうとする姿は想像し難い。作風が微妙に異なるアニメ版では合わないだろう。あまりの見果てぬ夢に八幡は「現実的な変化球を覚えるべき」と助言するが蛮は諦めない。だが無理な特訓を続けたことで腕を痛めてしまい、数日は投球出来なくなってしまう。その帰り、ビル上部から作業員が落としてしまったスパナを危うい所で回避した蛮は魔球のヒントを掴む!!これが何を意味するのか?

後日、八幡と蛮は奇妙な特訓を始める。「八幡がロープに括り付けたバットを振り回し、それを蛮がジャンプして避ける」時にバットに弾き飛ばされながらも特訓に明け暮れる蛮を遠くから見つける理香。雨の日、理香は多摩川グラウンドへバイクで現れ、特訓中の蛮に突進!!突然の「協力」に驚きつつも辛うじてジャンプし避け続け、ついに特訓完了。そのまま川上監督へ魔球の完成を報告。川上監督は王を連れテスト。その威力に驚愕し、蛮の一軍復帰を認める!!実にスピーディーな展開である。

場面は変わり神宮球場の巨人・ヤクルト戦。9回裏ヤクルトの攻撃で、巨人・新浦投手は満塁のピンチとなり、ここで眉月が登場。そしてリリーフで蛮が登板するときが来た。捕手は八幡が務め、観客からはロッテ打線に完敗した番場に用は無いと野次が飛ぶ。そして・・・・第一球、蛮はマウンドで大ジャンプ!!そこからミット目がけて全体重を乗せた凄まじい剛速球を投じた!!名付けて「ハイジャンプ魔球」!!

驚愕の神宮球場であったが、三原監督はルール違反ではないかと抗議。しかし川上監督は王と事前に確認済で自信の表情を見せる。そして審判もルール違反ではないと判断し試合続行となる。ハイジャンプ魔球は見事眉月を打ち取り、巨人は勝利するのだった。

魔球のヒント、特訓、そして初披露とテンポ良く纏められており飽きさせない構成。原作漫画版を先に読んでいるとあまりの速さに驚くが、そもそも魔球誕生までの流れも全て異なるので、各々の展開を楽しむのが正解だろう。

 


第22話「怒濤の完全試合宣言」

脚本:山崎晴哉 コンテ:出崎

 

「さあ、見事ハイジャンプ魔球を打ち崩してみせるぞ。来い!!」

球界を騒然とさせたハイジャンプ魔球。唯一の対戦者となった眉月と三原監督はその対策を練る。高所からの投球に通常の打法では対抗出来ない。立膝をついた状態で完璧に打つことが可能な状態に仕上げるには通常では半年は必要である。テレビ番組にゲスト出演した二人は、司会やコメンテーターの楽観的な意見を否定。やがて慣れて打てるのでは?と安易な意見をコメンテーターの口から言わせるのが面白い。そんな容易なものではない、だが必ず打つと宣言する眉月の言葉に対し、蛮はいきなりテレビ局へ連絡。なんと生放送中に司会に電話を繋ぎ、対ヤクルト戦で完全試合すると予告してしまう。もう滅茶苦茶だ(笑)これは八幡でなくても頭を抱えてしまう。(このときに蛮が手にしている雑誌の表紙が「ど根性ガエル」のピョン吉なのが可笑しい)

アニメ版の蛮はプロ入り一年目、公式戦初登板の第一球がハイジャンプ魔球ということになる。対する眉月もデビュー早々に魔球対策の特訓を行うことになった。「瑞泉寺」にいる弓道を極めた師範の協力を得て、打倒ハイジャンプ魔球の特訓開始!階段下にいる眉月は立膝でバットを構え、高所から師範が弓を撃つ。その弓をバットの芯でとらえることが目的である。しかし通常の打法とは異なる筋肉に強烈な負荷をかけるため激痛が走る!!この特訓エピソードはアニメ版オリジナル。後に判明する弱点と攻略法が(合理的だが絵的に)地味だけに、この補完はテレビ番組として正解ではないか。眉月の特訓は10日目にしてついに完成。急いで巨人ヤクルト戦に向かう!!蛮の投球は冴え渡り完全試合も目前となるが、最後の打者として眉月が登場。高所からの弓を打つように魔球を打つ!!だが僅かに逸れ、続けて投球のタイミングをずらした魔球をも打ち込むが、これも逸れてしまう。ごく短期間で打法をマスターするも全身の筋肉が順応しきれず苦しむ眉月・・・だが投球後にマウンドに着地した際の蛮を見て「ハイジャンプ魔球の欠点」に気付く。三球目、唐突な眉月のバントに全体重を乗せて着地した直後の蛮は対応出来ない!!完全試合ならずか!?しかし全身の筋肉を傷めた眉月は一塁に辿り着く前に倒れ込む・・・予告通り見事完全試合を達成するも、勝負に勝ったのは眉月であった。この回の主役は完全に眉月であり、密度の濃い傑作回と言えるだろう。

 


第23話「死闘!ハイジャンプ魔球対巨砲」

脚本:安藤豊弘 コンテ:石黒昇

 

「ワシが破る!!ハイジャンプ魔球破れたり!!」

眉月の次にハイジャンプ魔球に挑戦するのは当然、中日ドラゴンズに入団した大砲である。

「怪童 ハイジャンプ魔球打倒宣言」・・・新聞に大きく報じられ、八幡は脅威を感じるが蛮はマイペース。「この俺がそんなコケ脅しに乗るか!」と全く気にしないのだった(笑) この辺は意外に脆い面もあった原作漫画版との違いを感じる部分である。中日の二軍選手たちはこの記事が気に入らない。生意気な新人・大砲へ出過ぎた発言だときつく当たるが「死んでも打ってみせる!!」と大砲の気迫に圧倒されるのだった。巨人二軍といい、一部の二軍選手たちの描かれ方は問題だ(笑)

だが大砲は急激に調子を崩し、フォームも崩れ無様な姿を晒す。ついには休養扱いとなり故郷の飛騨へ帰ってしまうが、これには何かある・・・大砲はハイジャンプ魔球の2階から投げ下ろされるような剛速球への恐怖の克服、全体重を乗ったボールの打倒のために特訓を繰り返していたものの成果を出せずにいたが、眉月のバント対策からヒントを得、眉月と同じ体勢でボールを当てた瞬間にバットを振り切りスタンドへ運ぶ特訓を開始。故郷の友人、一平の協力を得て自らは背後に川のある低所で斧を構え、一平は高所から大砲目がけて丸太を滑らせる。斧をバット代わりに振り切り、迫る丸太を真っ二つにすることで手首を大幅に強化することが目的だ。その丸太の勢いと重量に弾き飛ばされる大砲!!丸太も大砲も斧も川に吹っ飛ぶ描写は凄い。そしてついに丸太を真で捉え真っ二つにすることに成功。このタイミングと瞬発力でハイジャンプ打倒なるか?

迎えた中日球場での巨人ヤクルト戦。快投の蛮の前に代打・大砲が登場。1度目の対決ではハイジャンプ魔球特有の立体的なストライクゾーン解釈に戸惑い抑え込まれるも、2度目の対決はファウルの連続で蛮の体力を削ぎ、コースの甘くなった所を見事叩き中日に勝利をもたらす。魔球破れたり!!大砲の打球が右足に直撃した蛮は負傷。次回どうなる?

 


第24話「新魔球のヒントをつかめ!」

脚本:谷あさこ コンテ:福富博

 

「今に見ろ大砲!俺は貴様をこのハイジャンプ・エビ投げ魔球で必ず・・必ず這いつくばらせてみせる!!」

ハイジャンプ魔球を大砲に攻略され、さらに右足を負傷した蛮は、そのまま救急車に運ばれることに。接骨医・吉田の診断では足の骨のヒビの入り方が悪かったら投手として再起不能になっていたという。大砲の打球のダメージは思いのほか大きかったのだ。大人しく一カ月入院するよう指導される蛮だが納得いかない。名医である吉田なら三日で治せるだろうと無茶な要求をするものの当然一蹴され、バカ呼ばわりされた挙句に面倒見切れないので出ていけと言われてしまう(笑)

その通りに出ていくものの今度は階段から転落。今後はベッドに縛られ足を吊るされ散々な状態に。それにしても入院中もユニフォーム姿なのが不思議だ。見舞いに来る八幡も大砲もしっかり着ているのだった(笑) そこに久々にバンババン私設応援団の田淵が見舞いにやってくる。田淵に頼み込み入院先を抜け出す蛮。行く先は川崎球場!中日大洋戦の大砲の打席を確認するためだ。豪打爆発の怪童は大活躍。ハイジャンプ魔球を破った「マサカリ打法」は完成されつつあった。が、その打球が蛮の頭上の看板へ直撃!跳ね返ったボールが球場内の売り子の持つ番重(商品を乗せたトレイ)に当たり、それが運悪く負傷した足の上に落ちてしまう!!

蛮は再び吉田整骨院へ・・・今度は動物園のゴリラのように檻に入れられ暴れる蛮は川上監督に連絡するも「普段物を考えんお前には良いチャンスだ。じっくり反省しろ」と怒られる(笑)

八幡は蛮を落ち着かせる意味でも投球動作を撮影したフィルムをテレビ局から借り、二人で病室で研究。より高く飛びハイジャンプ魔球のスピードを速める事は不可能。ならばどうする?そのとき、病室に入っていた釣りが趣味の吉田が何気に釣り竿を投げる動作を見て蛮は突如閃く!!「高さは現状のままで速度を増す」投法があった。竿のように上体を逸らす投法・・「エビ投げ」だ。ハイジャンプ魔球の改良型で大砲を打ち取って見せる!!闘志を燃やす蛮であった。

今回の蛮は縛られたり檻に入ったり自業自得とはいえ散々だったがテンポ良い流れで実に面白い。次回が気になる引きといい傑作回と言えるだろう。

 


第25話「決戦!宿敵大砲との勝負」

脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「大砲!そのちっこい目をかっぽじっつて良く見やがれよ!俺のエビ投げハイジャンプ魔球を!!」

本話からオープニングとエンディングが変更される。但しオープニングは本話のみ子門真人氏がメインボーカルを務めるバージョンで、26話から男性コーラスグループであるロイヤルナイツがメインのバージョンとなる。

「昭和48年4月27日」のテロップが映し出され、交通ゼネスト(ゼネラル・ストライキ:全国的規模で行われるストライキ)により、全国的に交通機関が麻痺し、巨人軍は新幹線により名古屋へ移動することが不可能となった。当時大きく報道された問題がアニメ本編で描かれているのは興味深い。巨人軍のバスは交通渋滞に巻き込まれ、球場に中々辿り着くことが出来ない。この描写が中々リアルである。

改良型ハイジャンプ魔球をひっさげ大砲に挑戦する筈が到着が遅れることとなり、前日に名古屋に移動していた堀内が先発となる。蛮との対決を楽しみにしている大砲は不調の堀内から容赦なくホームランをかっ飛ばす。精彩を欠く巨人だが、遅れて到着した蛮がついにリリーフで登場。ナゴヤ球場のマウンドに立つ!

足首を負傷して休場した蛮にどんな策があるのか?「片足打法(マサカリ打法)」で返り討ちにしてやると自信満々な大砲だが、蛮は予想の遥かに上を行った!!ハイジャンプした後、上体を大きく仰け反り、上半身のバネを最大限に使った剛速球が大砲に迫る!!「エビ投げハイジャンプ魔球」の鮮烈なデビューであった。

見事大砲を打ち取った蛮は続けて中日打線を抑え込む。だが与那嶺監督はどこかに必ず弱点がある筈と呟く・・・あと一人で巨人の勝利となるが、何故かヒットを許してしまう蛮。長時間の移動と新魔球により蛮は体力を消耗していたのだ。大砲は考える。エビ投げ状態となる為投球直前まで球道が読めないが捕手が取れるのは何故か?おそらくは捕手のミット目がけて投げ込んでいると読んだ大砲は二塁ランナーにサインでミットの位置を知らせる作戦をとる。だが魔球の威力は凄まじくバットをもへし折る!!更に大砲はバットに手を包帯で縛り付け、どんな衝撃でもバットを離さない覚悟で魔球に挑むが、大砲の右腕は魔球の威力に耐えられず骨折。宿命の対決は蛮の勝利となった。

 


第26話「大砲万作の危機」

脚本:山崎晴哉 コンテ:出崎

 

「たとえ昨日くたばってたにしてもよ、俺が生き返らせてライバルとしてグラウンドに引き摺り出したぜ!」

今回は野球とは離れたオリジナルストーリーとなる。蛮との死闘で右腕を骨折した大砲は戦線離脱。暫し故郷である飛騨へ帰ることとなった。

一方蛮は夜の街で突然暴漢たちに襲われる。反撃し警察も駆けつけると、意外にも5人の子供たちだった・・・・その子供たちは一言も喋らない。裏で糸を引く存在がいる筈。しかし誰が?

後日練習中に球団マネジャーが駆けつける。子供たちに闇討ちを指示したのは何と大砲だというのだ!!子供たちは大砲の兄弟であった・・・・そんな卑怯な男ではないと蛮は信じず、大砲にそれを確かめるために飛騨へ向かう。

大砲の実家に訪れた蛮だが彼は不在。湯治に出かけていたのだが、ここで大砲の母が登場。アニメ版の大砲の家族は原作漫画とは設定が異なり、母は病弱の身で父は故人、兄弟は先に登場した5人である。(原作漫画では大家族で祖父母、父も存命)

大砲を追った蛮はようやく見つけることが出来るが、自らの敵討ちのために蛮を襲った5人を庇い、自分が指示したという態度を崩さないのだった・・・蛮はその頑なな態度に痺れを切らし、雷が轟く中外に飛び出すが、蛮の近くに落雷!!足元が崩れ危機に陥る。

必死になって蛮を救助した大砲であったが足を負傷し、更に高熱により命の危険に晒されてしまう。ここで父親が既に故人である事が語られ、自分も同じ運命であると語る大砲・・・だが蛮は諦めない。地元の医者、更には川上監督へ連絡し、悪天候の中で読売新聞社のヘリコプターが到着!(川上監督の判断力と実行力、権限が凄いと驚く)大砲を死なせてはならないのだ!!命をとりとめた彼は蛮に感謝し、必ず再起すると誓うのだった。蛮の良い奴ぶりが光るエピソードである。

 


第27話「狼酋長現わる!」

脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「俺のことで余計な心配はするな。俺への命令は一言でいい。"戦え"と。」

19話で激闘を繰り広げたウルフ・チーフが再登場。蛮との対決に敗れた彼はその後スランプとなり、スタンドからは罵声が浴びせられる。「何が殺人スライディングだ!」「負け犬は尻尾を巻いて西部の荒野へ帰れ!」と容赦が無い。「アスレチックスの秘密兵器」だった筈が、あの一戦以来全てが狂ってしまっていたのだ。ウィリアムズ監督から二軍行きを言い渡され動揺するウルフだが、更に数日前に日本の阪神タイガースのスカウトが来た際に渡された週刊誌の表紙を指し、「コイツの亡霊を祓ってこい」と指示される。その表紙にはハイジャンプ魔球を今まさに投じようとするバンバ・バンの姿が!!本音を見透かされたウルフは蛮との対決を熱望。二軍ではなく日本行きを希望する。今シーズンだけで良い!日本のサムライの血が自分を呼んでいると。そのために直ちに西部へ戻り、来るべきときに備え特訓するという。ウィリアムズ監督は白人へ牙をむく誇り高きアパッチ・ウルフとの出会いを思い出し、その願いを聞き入れる。「狼よ、再び荒野に帰れ。そしてその牙を磨き直して来い!!」と。このシーンは熱い。

一方蛮はテレビ番組出演中に駆けつけた八幡からウルフ来日を知る。録画中にも関わらず話し出す八幡とそれを聞いて抜け出す蛮が可笑しい。二人は急ぎ空港へ向かう!そして現れたウルフ。「ウェルカム!ウルフ・チーフ」と蛮が投げた花束を払い、「俺はゲイシャ・ガールの真似をする男に会いに来たのではない!サムライと戦いに来たのだ!!」と闘志をむき出しにして「アパッチの戦いの挨拶」と腕を組み戦線布告。蛮も「俺のエビ投げハイジャンプ魔球でキリキリ舞いにさせてやるからな!」と不敵に笑う。やはり荒々しいタイプのウルフが登場すると緊張感が生まれ面白い。

早速阪神大洋戦で代打で登場したウルフは奇妙な動きを見せ、バットを回転させてピッチャーへ打ち返す。ボールを受けた投手のグローブはズタズタに切り裂かれ、更に鋭さを増した殺人スライディングで三塁手、捕手と血祭りにあげ阪神に勝利をもたらす。

あの動きは何なのか?恐るべき第三のライバルとの対決の日は近い。

 


第28話「対決!魔球対スクリュー打法」

脚本:金子裕 コンテ:奥田誠治

 

「スクリュー打法とのケンカ!この俺が買ったぜ!!」

本話で蛮とウルフが再び対決。前回ウルフが見せた奇妙な動きの正体が明らかになる。一見平凡なピッチャーライナーがグローブを切り裂き、投手を恐怖に陥れたのは何故か?冒頭、雨の中でウルフの打法の正体について考え込む蛮。目の前に理香がいても気付かない。これまでは即デレデレしていたが徐々に変化しつつある事が分かる。明るい作風はそのままに、ギャグ色がやや薄まった感じか。

伝統の巨人阪神線。ウルフはきっと出てくる。長島の予想通り代打で登場した狼酋長!堀内の速球に対し、ウルフはまたもバットを回転させながら打ち、打球は一塁の王へ。だが普通の打球ではない!咄嗟に避ける王だがボールと接触した帽子はズタズタに切り裂かれ、フェンスに直撃したボールは高速で回転し続けめり込む!!そして殺人スライディングで見事1点をもぎ取るのだった。

川上監督は謎の動きの正体を見抜く「回転するバットをボールに直角に当てる。その途端ボールは複雑な回転を与えられ、次の瞬間バットはボールは更に回転を与えながら、すくい上げながら弾き返す。触るもの全てを弾き返し立ち塞がる壁をも抉る回転を与えられて飛ぶ打球、これがスクリュー打法の正体だ!」この地獄の打法にどう立ち向かうのか?

リリーフで登板した蛮、ついに対決のときが来た。初球からのエビ投げハイジャンプ魔球にウルフもタイミングが合わせられず、その威力に驚く。三球連続で魔球を投じ初対決は蛮が勝利!!だがウルフは何かを考え、次の打席で必ず打つ。俺に打順を回せと闘志を燃やす。そして9回、二度目の対決がやってきた。ウルフは「キバにはキバ」と蛮のジャンプに合わせて自らもジャンプ!!原作漫画版での空中打法が形を変えて登場。タイミングを合わせる事に成功したウルフは魔球をスタンドに運ぶ!!エビ投げハイジャンプ魔球の敗北にショックを受けた蛮は自らマウンドを降りてしまうのだった・・・次回どうなる?

 


第29話「渦巻く恐怖の新魔球」

脚本:安藤豊弘 コンテ:出崎

 

「待ってろよウルフ・チーフ!!この大回転魔球で必ず打ち取ってやるぜ!!」

前回の降板を経て失意の蛮を描くと思いきや、そこは巨人のサムライ。豪快な内容で実に面白い回である。エビ投げハイジャンプ魔球を攻略され、行方をくらませてしまった蛮。プロ入り一年目にしてオールスター戦に選ばれたタイミングでの失踪で新聞に大きく報じられ、ウルフは逃げたライバルに怒りを露わにする。だが、蛮は逃げたのではなかった。八幡に届いたハガキから南伊豆の民宿にいることが判明する。早速連れ戻そうと川上監督に連絡するも「その必要は無い!」と突き放す。(当然である。)それでも八幡は蛮が気になり伊豆へ。住民から岩場にいると言われ駆け付けると、フンドシ一丁で大の字で寝ている蛮を発見(笑)意気消沈している様子はなく、ある目的の為に特訓を開始していた。そして良く見ると身体中傷だらけである。オールスターのファン投票で一位になった事を伝え、すぐに戻るよう促すが蛮はそれを拒否「完成すればハイジャンプ魔球なんか足元にも及ばない魔球となる」と。(蛮はなぜ第2の魔球のヒントを掴んだのか?原作漫画版ではハイ・ジャンプ魔球の欠点からの発想であったが、いきなり特訓描写からスタートしている点は共通している。)八幡はその覚悟を知り懲罰覚悟で協力を申し出る。

こうして新魔球を目指し二人の特訓が始まった!!が、樽の中に蛮が入り、海に向かって急な傾斜を転げ落ちるというムチャクチャな内容である(笑)スキーのジャンプ台のように樽が飛び上がり、そこから蛮が飛び出すもバランスを崩し海に落下。だが激しい特訓の末についに空中で回転しながらバランスを取る事に成功!!果たして魔球の正体は?

東京に戻った蛮は川上監督へ説教は後で聞く、まず新魔球を見て欲しいと長島、王との対決を希望する。そして・・・・蛮は突如マウンドでコマのように高速回転!「腕が八本にも十本にも見える」中で放たれる剛速球の前にONは打ち取られ、川上監督は驚愕する!!名付けて「大回転魔球」の誕生である。蛮は来るウルフとの再戦に燃えるのだった。原作漫画版のエピソードにオリジナル要素を加え、上手く纏めた好編である。

 


第30話「復讐の大回転魔球」

脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「これでこそ、父ちゃんの子だよ!」

エビ投げハイジャンプ魔球を破ったウルフとの再度の対決を描くテンションの高い回である。

夜の多摩川グラウンドでの極秘特訓で蛮は新魔球をマスターし、特訓相手である八幡もそれを確実に捕球出来る実力と自信を身に着けた。る阪神との連戦で川上監督は蛮に先発を命じる。勿論八幡も一緒だ。「大回転魔球」デビュー戦は同時にウルフ・チーフへの復讐戦でもあるのだ!!「個人的な感情も巨人軍のためになるなら利用するまでのこと」と言い放つ川上監督が格好良い。

今回は地元土佐で蛮を見守る母・キクと妹・ユキが登場。そして観客席には理香が。試合一辺倒にならず脇を固めるキャラも丁寧に描いており、特に今回のキクの表情や台詞に注目したい。

先発の蛮は新魔球を温存。軽口を叩きながら相手打線を抑え込む。そしてウルフの打順が回り、ベールを脱ぐときが来た!「その笑い顔もこれまでだぜ!!」高速回転しながら残像現象を引き起こす大回転魔球にウルフは驚愕!成すすべもなく三振に打ち取られる。恐るべき新魔球の誕生にスタンドも沈黙するのだった・・・。だがこのまま引き下がる男ではない。何か策はないか・・・前回のエビ投げハイジャンプ魔球を打倒したときのように、敗北直後から打倒策を練るスピーディーな展開が面白い。彼はアメリカの大地で猛牛を狩ったときのことを思い出し、「群れの中の一個体を見極める」すなわち「大回転の残像の中から本物を見抜く」方法を探る・・・そして九回裏ツーアウト、巨人リードのまま最後の打席でウルフが登場。何と大回転魔球のタイミングに合わせて突如高速回転!!原作漫画版で大砲が行った「回転打法」をウルフが使用したのは驚く。見事バットに当てることには成功するも、その球威に押され失敗。大フライとなり巨人は勝利する。

この屈辱は晴らすと再戦と勝利を誓うウルフに「いつでもかかってこい!待ってるぜ!!」と蛮。実に熱い回であった。

 


第31話「V9に向かって浮上せよ!」

脚本・コンテ:出崎

 

「立て立て立てーーーッ!!それでもサムライかーーーーッッ!!!」

胸が熱くなる傑作回である。成績が低迷しV9が危ぶまれていた状況が作品内容に反映されている。冒頭で中尾二軍コーチの口から語られるが、ペナントレースで巨人は4位。特に中日には17戦中、巨人は僅かに4勝という苦しい状況である。来る中日との三連戦に備え炎天下の中で練習が始まるも、三戦目への登板が予定されている蛮は休むよう指示される。大回転魔球による激しい消耗からの回復は本来5日を要する所を3日にして登板となるためだ・・・。

その指示を無視して八幡相手に大回転魔球を投じようとするも、やはり体力が回復しておらず倒れ込む。本話は所謂ギャグ要素は皆無でシリアスな雰囲気で進む。

そして迎えた第一戦、蛮と八幡はベンチで観戦するも依然として疲労が激しい様子である。巨人はリードしているものの危うい状況が続く。しかし途中雨が降り、結局雨天により試合は中断。巨人の勝利となり喜ぶ八幡と巨人ナインであったが、それを見た蛮は納得いかない。こんな勝ち方で良いのか?次の試合は自分を出してくれ!幸運の入り込む余地のない勝利を掴んでみせると息巻く。そして第二戦、苦戦する自軍の様子を見かねて蛮はリリーフを希望する。第三戦まで温存したい川上監督だったが、ここで予定されていた新浦がアクシデントにより負傷し、蛮に頼るしかない状況になってしまう。川上とブルペンとの通話を遮り自分が投げると主張する蛮が格好良い。

蛮は体力が回復しないまま大回転魔球を連発し、次々に三振に打ち取るが、徐々にコントロールが乱れ中日は待球作戦に出る。苦闘のサムライの姿に燃えた王、長島は気迫のプレーでサポート!二人とも担架に運ばれる展開には驚く。このゲームに勝てば巨人は4位から3位に浮上するのだ!!

あと一人にして限界を超えている蛮は大回転魔球の途中で倒れ込みボークとなってしまう。もはや動くこともままならない程消耗している姿が痛々しい・・・だが川上監督は鬼となり、大回転魔球以外を投げることは許さん、さあ立て立て立てーーーッ!!それでもサムライかーーーーッ!!と檄を飛ばす!!!実に熱い台詞である。そして立ち上がった蛮は見事最後の一人を打ち取り、巨人ナイン、中日ベンチ、観客たちは力尽き倒れたサムライへ拍手を送るのだった・・・ライバルも理香も登場しない、史実において苦戦を強いられた背景を基に作られた単独エピソードであるが、脚本、演出の完成度は高く作品世界に引き込まれる回である。

ペナントレースで苦戦する巨人、中日の脅威、限界を超えて魔球を投じる主人公と、この時点ではまだ週刊少年ジャンプ連載中である原作漫画版の結末を思い出さずにはいられない、ある意味最も原作漫画に近い雰囲気の回と言えよう。

 


第32話「危うし!大回転魔球」

脚本:安藤豊弘 コンテ:小華和ためお

 

「蛮君・・大回転魔球は凄い球だった。勝負はまたの機会にお預けだ。そのときこそ!!」

今回は負傷から回復した大砲との再戦を描く。休養中に大回転魔球を徹底的に研究した大砲は友人の協力を得、扇風機のように回転しながらボールを打ち出すピッチングマシン相手に魔球攻略の特訓を開始する。

原作漫画版で披露した「回転打法」は先にウルフが披露しているため、その特訓内容と目的はほぼアニメ版オリジナルである。この「魔球マシン」を作製した奥飛中学校野球部OBであり、大砲の友人でもあるアキラなる人物は実に良い奴で、勤務先の金属加工の工場も大砲に全面的に協力。そんな中、工場内でプレス機を見た大砲は、「プレスの上下運動」で隙間が出来る瞬間に素早くバットを振る特訓を思いつく。僅か数秒の間でプレスに挟まれずにバットを振ることは困難であり、バットはへし折れ自らも吹っ飛ばされるも明け方まで特訓は続き、ついに高速スイングをマスターする。続けて休憩のために立ち寄った定食屋の中で起きた偶然の出来事から「どこから飛んでくるのか分からない」大回転魔球を打倒するための新たな特訓を思いつく。マウンドとバッターボックス間に巨大な障子を思わせる壁を設置し、ランダムに飛んでくるボールを瞬時に見分け打つ!ボロボロになりながら選球眼を身に着けた大砲はついに巨人戦で代打で登場。それに応え川上監督も蛮をリリーフで登板させる。大回転魔球のタイミングを掴んだ大砲は初めて魔球をバットに当てることに成功する。帽子のつばで回転動作を見ず残像現象が起きるのを防ぎ、更に鍛えた動体視力でバッターボックス直前でボールの軌道を確認、一気に叩く打法である。原作漫画版では投手側に背を向け、ボールがミットに収まる瞬間に叩く「背面打法」を使用したが、わざとバット目がけてボールを投げ凡打に打ち取る戦法で攻略されている。本話では魔球攻略まであと一歩まで迫るが、渾身の魔球の威力と大砲の強烈な打撃によりボールが真っ二つに裂けてしまう。結果蛮の勝利となるが、必ず大回転魔球を破ると誓う大砲であった。

 


第33話「涙の逆さ吊り打法」

脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「川上監督の期待、巨人軍の期待に応えねばならん!!」

 

本話の主役は八幡太郎平である。

原作漫画版では蛮の練習相手としての価値のみ認められ、蛮の成長に伴い契約解除を言い渡された八幡は、その練習相手として蛮と向き合った期間に優れた動体視力と死球をも恐れないメンタルを身に着けており、やがて打者として開眼する。(魔球を捕球出来る捕手としての立場を確立するのはまだ先のことである。)

それに対し作中の時系列の異なるアニメ版は蛮がプロ入り一年目且つデビュー戦から魔球をひっさげての登板となったため、八幡は練習相手という立場は共通しつつ「魔球専用の捕手」として一軍登録されていた。

投手としての道を断念し打者として生きることを選択するドラマが無いのは残念だったが、ここに来て全く違う形で打撃開眼するエピソードが作成された。

ここ一番の打席で結果を出すことが出来ない八幡を巨人軍上層部は問題視、見かねた捕手・森は自分が大回転魔球を捕球すると川上監督へ申告。もはや八幡一人に蛮の捕手を任せることは出来ない状況となっていた。ヤケになった彼は寮を抜け出し、酔っている所を蛮に発見される・・・。森の申告は二軍選手達にも伝わっており、久々に二軍の嫌な先輩・富樫が登場。相変わらず他人の不幸を喜んでいる小物ぶりを発揮している。後日打撃練習中に王の一本足打法の揺るがない足腰の強さに注目した蛮は八幡の弱点に気付き、二人は山奥へ(山奥に行くことが多い気がする。)そこで蛮は何と八幡を川へ突き落とし、用意していた丸太を彼目がけて流す!川の中で体勢を保ちながら丸太を下流へ受け流すことで下半身を鍛えることを目的とする。更に足首を縛り絶壁に吊るされた状態で蛮の投じたボールを叩く狂気の特訓開始!あわや転落の危機に陥るものの、短期間で自信を身に着けた八幡は広島戦で代打で登場。川上監督の期待に応え、見事結果を出すことに成功するのだった。八幡にスポットを当てつつ、曖昧になっていた選手としての立ち位置を明確にしたエピソードである。

 


第34話「命がけの極秘特訓」

脚本:金子裕 コンテ:竹内啓雄

 

「必ず!必ず大回転魔球を倒す!!」

 

久々に眉月が登場。天才児は大回転魔球にどう挑むのか?

ついに巨人は首位に立った。向かうところ敵なしの蛮だが、スタンドからそれを見ていた理香は「ウルフ、大砲を退けたとしても、もう一人いる」と呟く。

大回転魔球の活躍ぶりにマスコミでは無責任な楽観論も飛び出すが、川上監督はあくまでも慎重である。いつ何処で思わぬ刺客が現れるか分からないのがプロの世界なのだ!

場面は変わり「眉月電機株式会社 川崎工場」の看板が映る。そこには社員一人と眉月の姿があった。父の会社の工場内に設置されたのは今でいうVR(ヴァーチャル・リアリティ:映像や音声などの効果によって現実世界のような疑似体験を可能にした技術)による大回転魔球を再現する映像装置である。それによって蛮がマウンドで回転を始めた後はボールを見失い、再びその目で捉えたときは既に打つタイミングを逸していることが判明する。「打つ」ことは出来なくても「当てる」ことは出来ると主張する社員に対し、それでは勝つことは出来ないと苛立つ眉月・・・。

そこに突然父が現れた。眉月の父は原作漫画版では未登場。台詞から推測するに眉月電気を一代で築いた技術畑出身の彼は、理論的に攻略不能と判明した大回転魔球の打倒を諦め、野球界から実業界への転身を(半ば強行に)勧める。眉月は大学進学を撤回しヤクルトへ入団しているが、父親はそれを快くは思っていなかったのだろう。理屈を超えた執念で魔球との対決を望む眉月は、来る巨人戦で敗北したときは退団すると伝える。

だが打倒策が思いつかぬまま彷徨う彼は理香に挫折を知らぬ故の弱さを指摘されてしまう・・・この回の眉月は今までになく弱さを露呈しており、それまでの自信家ぶりを知る者には意外に映るかもしれない。

だが、晴れない表情のまま立ち寄ったゲームセンターでパンチングボールで遊ぶ子供の言葉を耳にした彼は突如閃く!!「パンチングボールが自分に向かってくるときに叩かなければスコアは伸びない」ならばその逆は?・・・バットをへし折り、バントすら許さない魔球を倒す方法はこれだ!!再び工場へ向かった眉月は今度は靴を脱ぎ「滑りやすい状態」で「鉄球を打ち出すマシン」相手に血みどろの特訓を続ける。果たしてその特訓の意味は?

 


第35話「大回転魔球最後の日」

脚本:金子裕 コンテ:田中実

 

「来い!!君の大回転魔球を墓場へ送ってやる!!」

 

前回明らかに無茶な特訓を続けた眉月だが、ついに大回転魔球攻略打法をマスターし蛮へ挑む!

1973年(昭和48年)のヤクルトアトムズの成績は低迷しており、冒頭で車内の三原監督と中西コーチの会話でそのことに触れている。本話は1974年6月2日放映、約1年前の史実を基に制作されていることが分かる。最も早く登場したライバルは原作漫画版では球団成績の低迷が影響し後半出番が減少してしまったが、キャラクターの数が整理されたアニメ版では眉月が大回転魔球攻略の大役を務めることとなった。(原作漫画版で大回転魔球を攻略するのはアニメ版未登場の不二立彦である。)突然現れ道を塞いだ理香に案内され、二人は特訓中の眉月を目撃する。常軌を逸した特訓によって消耗の激しい眉月はその場に倒れ込む。驚愕の三原監督は明日の巨人戦に備えよと指示を出す。果たしてどんな打法なのか?

眉月は自宅で休むが身体に激痛が走り、試合数時間前となっても回復は出来ていない状態であった。そこに父が訪れるが、這ってでも球場に向かおうとする息子の執念に折れ前話で交わした約束を取り下げる。まずは回復を優先せよと気遣う話の分かる人物である。だが再び倒れ込んだ眉月は目が覚めると病室にいた。もう試合は始まっている・・・焦る彼は父が病室を離れた隙に脱け出し球場へ向かう!!

大回転魔球は冴え渡り、あと一人で巨人の勝利となったとき、ついに代打で眉月が登場。宿命の対決のときが来た!!魔球打倒に燃える姿は格好良い。

八幡は眉月の足元を確認しスパイクに鋲がないことに気付く。まるで打たない為に工夫しているようだと巨人ナインは困惑・・・だが大回転魔球を眉月が捉えた瞬間に真の理由が判明した!バットは折れることなく眉月の身体がそのままバッターボックス後方にスライドし衝撃を緩和、続けて動作を開始した渾身のスイングによってボールはバックスクリーンに直撃!!ついに無敵の魔球を破った眉月はホームイン後に力尽きる・・・。蛮は潔く負けを認め、二人は固い握手を交わすのだった。次回、再び魔球を失った蛮はどうなる?

 


第36話「必殺の新魔球誕生」

脚本・コンテ:出崎

 

「ボールを潰すだって!!??」

 

既に原作漫画版とは全く異なる展開となっているが、ついにアニメ版オリジナルの魔球が登場!そのインパクトはそれまでの魔球に勝るとも劣らず、空手の要素もプラスされた実にサムライらしい魔球である。

前回、眉月と固い握手を交わし敗北を認めた蛮だったが、やはり魔球を失った精神的ショックは大きかった。気遣う八幡を拒絶する蛮。今まで魔球が破れる度に励まされ、新魔球の開発に協力して貰っていたが、それは互いのためにならない。現に協力を優先したために八幡の打撃開眼が遅れてしまった。互いに自分の腕を磨くのがプロの道ではないか・・・?だが蛮の発言は半ばヤケになってのことであり、八幡はそれまでの努力を否定する言葉を認めず力任せに投げ飛ばす。その際に壁に飾っていた皿が欠けてしまい、感情的になった蛮はその皿を外に放り投げる。すると皿は変則的な動きを見せ飛んでいった・・・突如閃いた蛮。だがその動きは皿の一部が欠けていたことが原因であり、この原理を当て嵌めるなら「硬球を通常の状態から変形させる」必要が生じ、それは不可能である。ヒントを掴んだものの振り出しに戻ったと自嘲気味に笑うのだった・・・・

八幡はどうにも出来ない状況を嘆き、夜の街で一人飲む・・・そこに偶然現れた古くからの知人。彼の名は「大山田 拳」空手の達人である。野球と空手、進む道は異なり助言は出来ないとしつつ、八幡が口にした「野球の硬式ボールを握り潰せたら助かる男がいる」という愚痴に対し、なんと「出来んこともない」と即答する!

後日、蛮は一人伊豆へ向っていた。そのフェリー上で偶然を装い近付く大山田。子供たちに技を披露と見せかけて、蛮の眼前でで硬球を握りつぶす!「自然借力法(じねんしゃくりきほう)」という瞬間的に握力を強化する荒業である。驚愕の蛮は大山田に教えを請い、伊豆の地で特訓が始まった。短期間での習得を目指し、下手すれば死んでしまうレベルの厳しい特訓に耐える蛮。第一段階をクリアし、次は一人になり実際に自然借力法によるボールの変形を目指した特訓が始まるが、心の強さ故に疲労も空腹も構わず練習を続けることを危惧する大山田。それを聞いた八幡は居ても立っても居られず伊豆へ駆けつけ、雨の中一人疲弊している蛮に自分が大山田に頼んだことであると明かしてしまう。己の力のみでここまで辿り着いたと思っていた蛮は、八幡と大山田が申し合わせていたと知り怒り爆発。その場でボールを握りつぶし、投じた球はいくつにも分身した!!「分身魔球」の誕生である。

 


第37話「怒りに燃えた分身魔球」

脚本・コンテ:出崎

 

「先輩、こうしてマウンドに立つ気分は最高だぜ!さぁ早くみんなにお待ちかねの魔球を見せるとするか!」

 

身魔球は誕生した!

早速八幡はそのことを川上監督へ伝える。無断で伊豆に行ったことを怒られると思いきや、明日からの阪神との連戦のために二人とも即戻るよう指示される。今回の川上監督はいつもと異なり切羽詰まった様子である。これは不自然なことではなく、実際に1973年ペナントレースで巨人は追い詰められており、それが作品内のキャラクター達の言動にも反映されている。

しかし、まだ分身魔球を捕球出来る相手がいないのだ。その役目は八幡が務めるしかない!!急遽特訓が始まるが、自然借力法を身につけた蛮は既に自分の意志でボールを握り潰せるようになっていることに驚く。予想通りボロボロになり、魔球に恐怖を感じる八幡であるが、それに打ち勝つために何と蛮はボールに刃物を突き立てて投げる。捕球出来なければ大怪我してしまう無茶な発想である(笑)当然逃げ惑う八幡だが、最後は見事捕球に成功!!二人は即出発するも既に一日経過しており、飛行機も間に合わず、新幹線は不幸にも事故によりストップ。もはや万事休すか・・・だがバイクを調達することに成功し熱海から後楽園をを目指す!!ここからメチャクチャなショートカットで一直線に後楽園に向かって突っ走る描写が楽しい。土砂で塞がれた道を強引に駆け上がり、下水道内を走り、最後は喫茶店の中を突っ切り窓を破壊して飛び出すシーンは凄すぎて笑ってしまう。後で大目玉なのは間違いなしである。

首位の座を阪神に奪われ後のない巨人。初戦に続き今日も来ないのかと川上監督は苛立つ。だが九回裏、サヨナラの大ピンチにようやく蛮が登場!!

ついに新魔球を披露するときが来た・・・空手の動きを取り入れた独特のフォーム、特徴的なSEで投球体勢に入る蛮。「自然借力法」によって握り潰され投じられたボールは無数に分身しながら凄まじいスピードで八幡のミットに収まった!!その威力と大胆な変化に球場は静まり返り、やがて騒然となるのだった・・・。

分身魔球によって見事ピンチを切り抜け、V9への望みを繋いだ蛮。(ここで巨人の勝利となるのではなく、引き分けで終了するのがリアルである。)八幡とも和解し、爽やかに本話は終了。無茶な特訓、バイクの長距離移動、新魔球の公式戦デビューと娯楽性の高い回であった。

 


第38話「大砲運命の一打」

脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「この一打に賭ける!それが友情に報いる道なんだ!!」

 

前回V9の望みを繋いだものの、特訓と連投の疲労で蛮はマウントで倒れてしまう。三日三晩眠り続け、目が覚めると巨人はヤクルトに敗れ自力優勝の望みは消えた・・・新魔球誕生の次の回にはチームの自力優勝が消える。まさに当時の混セの状況が物語に影響している。最も本話の放映は1974年6月23日。劇中は1973年の出来事であり、後先考えずに物語を進めているのではない。史実をダイレクトに反映した故の展開なのだ。

明日の中日阪神戦で中日が勝利しなければ巨人の優勝はない。中日が勝てば優勝を賭けて直接対決に持ち込める。何が何でも中日には勝って貰わねばならない・・・わざと負けて阪神に感謝されてやろうと軽口を叩くナインもいる中、大砲に弟である千作から連絡が入る。修学旅行で東京に行くので蛮と会いたいと言うのだ。大砲からそれを聞いた蛮は千作を迎えに行くがバスが到着しない。何とバスが転落事故に遭い、千作を含む奥飛騨中学校の生徒たちは御殿場の病院に搬送されたのだ!理香のバイクに同乗し病院へ急行する蛮。大砲は大事な試合を抜ける訳に行かず、医師を信頼し試合に専念すると言い聞かせるも焦りは隠せない・・・

治療のための血液が不足している千作だったが、駆け付けた蛮が輸血を申し出、幸い命を取り留めた。フラフラの状態の蛮は千作を理香に任せ、甲子園へ向かう。元々好感度の高い主人公だが、彼は本当にイイ奴だと再認識させられるシーンである。そして場面は変わり中日阪神戦。千作の様子が気になり調子を崩し、阪神・江夏投手に3打席連続で抑え込まれる大砲。観客からは巨人のV9を阻むために故意に凡退していると野次が飛ぶ。中日が負けても引き分けても阪神の優勝が確定してしまうのだ。たまらず病室の千作は蛮に助けられたこと、蛮の血の友情に応えて欲しいことを兄・万作に伝えるよう理香に頼む。それを聞いた大砲は闘志を取り戻し、気迫の場外ホームランで中日に勝利をもたらすのだった。巨人ナインを乗せた新幹線が中日球場前を通過するときに大砲が打つ描写が熱い。いよいよ優勝を賭けて阪神と直接対決するときが来たのだ!

 


第39話「輝け!苦闘のV9」

脚本:金子裕 コンテ:出崎統

 

「蛮よ、明日というやつはな、たとえどんなに辛くても今日を精一杯生きた奴だけの為にあるんだ!!

 

「勝った方が優勝」いよいよセ・リーグ王者を決める世紀の一戦のときが来た!

これは現実に起きた出来事であり、しかも伝統の巨人阪神戦。何とドラマチックな流れだろうか。本話ではウルフ・チーフが久々に登場。最終戦を前に帰ってきた彼は無人の甲子園球場で雄たけびを上げ、蛮との対決の時を待つ。(ウルフは前回の対決後、一時帰国していたと思われる。)一方蛮もライバルが帰ってきたと知り、対決に向けて一層練習に熱が入るのだった。

ウルフは分身魔球の映像を確認。恐るべき魔球と認めつつ打てると断言する。西部の荒野でコヨーテ(イヌ科の動物)の「一匹が何十匹にも見える動き」を見切っていた自分なら可能だと。弱点の発見ではなく自らの優れた動体視力に自信あっての攻略というのは今までに無いパターンである。そして巨人阪神最終戦の日が来た。長島が負傷により欠場という不利な状況だが試合は巨人がリード、先発の高橋が好投する中、ついに代打でウルフが登場。常識的に好調の高橋を降ろす必要はない。だが明日のない最終戦、敵が切り札を出してきた以上、巨人も切り札で行くしかないと川上監督は決断!ここで蛮が登場。闘志を剥き出しにして初球から分身魔球を投じる。それを見送るが余裕の表情を見せるウルフに八幡は不安を感じ、外角一杯に投げるよう指示。だがウルフはボールをバットに当てた!ファウルになったものの、新魔球をいきなりバットに当ててみせたパターン破りの展開に驚く。そして第三球はド真ん中への分身魔球!ここでコヨーテの動きとボールが重なる演出が印象的だ。魔球の軌道を目で追うことに成功したウルフは分身魔球をミート!!黒江のファインプレーにより結果はアウトとなるが、分身魔球を完全に打たれた蛮はベンチで涙を流す。誕生したばかりの魔球を叩かれたショックは大きかった。だが川上監督は蛮の甘い考えを一蹴し続投を指示!まだ他の打者には通じると阪神打線を抑え込み、巨人の勝利は目前となった。最後の相手は再びウルフである。その様子をTVで見ていた長島は突如閃きベンチへ連絡する。「バットは水平にしか振れん。新魔球はまだ生きている」・・・と。その言葉の意味を理解した蛮は突如アンダースローで分身魔球を投げる!!ボールは「縦」に分身しウルフは対応出来ず打ち取られるのだった。負けを認めるも一矢報いらんと最後の一球でジャンプし落下と同時にすくい上げるようにスイングして当てたウルフの執念も凄まじい。打球はピッチャーフライとなるが同時にバットが蛮の頭上へ!それをウルフが手刀で粉砕する。「今お前を殺したら後の楽しみが無くなる」と。まだまだ二人の戦いは続くのだ。

こうして巨人は1973年ペナントレースを制し、栄光のV9を達成したのである。

 


第40話「壮烈!日本シリーズ㊙作戦」

脚本:松岡清治 コンテ:出崎

 

「勝負のためならルールに触れない限りどんな事でも利用する。これがプロや!サムライよ、また来い!!」

 

日本シリーズでパ・リーグ覇者である南海ホークスと激突!原作漫画版とは大きく展開が異なり、シリーズ中に新魔球が誕生するエピソードはない。サブタイトル通り策士・野村監督の「マル秘作戦」が展開される注目の回である。

試合前ミーティングで巨人ナインは南海阪急戦の映像を確認。バッターボックスに立つ打者は三振後に投手ではなく捕手である野村監督に怒りの表情を向けている・・・川上監督は南海ホークスを率いる野村監督の「ささやき戦術」は要注意であると説明。恐ろしい男であると言わしめる彼の実力とは?

そして第一戦の日が来た。先に大阪球場へ到着した蛮と八幡は通用口で野村監督と正面衝突してひっくり返る。怒る蛮をのらりくらりとかわす野村監督。本心の読めない曲者である。この時点で既に野村の方が一枚も二枚も上手である印象だが、この後もあの手この手と蛮を揺さぶり投球への影響を狙う。続けて場面はロッカールームに。何故か週刊誌が不自然に置かれ、蛮はそこに書かれていた記事に驚く。「番場蛮と噂の女性 美波理香さんが突如元南海選手と婚約!!」「野村監督の仲人」・・・根も葉もない適当な記事だがショックを受ける蛮。「理香!待ってくれ!!」と去っていく憧れの女性の姿を想像するシーンがあるが、展開の異なる原作漫画版でも日本シリーズと並行して親の会社の都合により政略結婚させられる理香の姿が描かれている。彼女の存在は特にアニメ版では大きく、普段は豪快、シンプルな思考の蛮も脆い。前半でも度々嫉妬するシーンがあり、ギャグ色の強いものであったが今回は深刻な表情を見せる。様々な手段で蛮を翻弄する野村監督であるが、その洞察力と実行力、統率力は素晴らしく、勝つためならどんな手段も躊躇せず行う姿は圧巻であり単純な悪役ではない。止めを刺すように理香の話を持ち出し週刊誌の記事は真実であるかのように思わせ、八幡の言葉で一度は調子を取り戻した蛮も再び動揺、分身魔球が思うように変化せず打ち込まれ巨人は敗北!!(ここで雨が降ったのは次回の伏線となる。)試合後、理香の婚約は全くのデマであり、野村が話した事はデタラメであったことが判明。最初から最後まで野村監督に踊らされ本話は終了する。次回、この恐るべき強敵を相手に蛮はどう戦うのか?

 


第41話「復讐!雨中の日本シリーズ」

脚本:松岡清治 コンテ:富野喜幸

 

「この一勝でシリーズの流れは変わった。良くやってくれた番場!!

 

野村監督に完敗を喫した蛮。果たして第二戦はどうなるか?

八幡は蛮をシャワー室に連れて行き、そこで分身魔球の投球前の一連の動作を再現させる。すると濡れた手ではボールを握り潰すことが出来ず滑り落としてしまう・・・前回、偽りの理香の婚約話に動揺し、分身魔球の変化が消え打ち込まれてしまったが、その際に「雨」が降ってきたのはこの伏線であった。分身しなかった原因は不安定な精神状態だけではなかったのだ。前回のさりげない描写が欠点の発覚に繋がる展開は面白い。

雨が長引き試合中止か?と話す南海選手たちに必ずこの雨は止むと伝える野村監督。大阪球場の旗がポールに巻き付いている。これは空気が回っている証拠であり試合前には止む。そしてまた降ってくると。その通りに巨人南海の第二戦は行われることになった。巨人・新浦投手の心理を読み揺さぶりをかける野村監督と、その指示を忠実に実行する南海ナイン。強敵感に溢れる恐るべきパ・リーグ王者である。そして無死一塁三塁のピンチについに蛮が登場!同時に待っていたかのように雨が降ってきた。「大成功や・・・」野村監督は一人呟く。このシーンは止め絵が効果的に使用され印象的。危惧した通りに雨天では指が滑り苦しむ蛮。だが観客の野次からヒントを得た八幡は、蛮に「指」ではなく「掌」全体でボールを掴み握りつぶせと指示。自然借力法は掌で掴んでも使用出来たのだ!完全に分身させることに成功し試合中に弱点を克服するも、野村監督はすぐさま次の手を考え、モーションの遅い分身魔球の特徴を突きホームスチール!八幡の打撃妨害を誘い一点を奪う展開には驚く。野村監督の冷静さ、策士ぶりは見物である。だが蛮も負けておらず、続けてトリプルスチールをかけてきた際に分身魔球と思わせて通常の速球を投げ、避けたバットに命中させてトリプルプレーを完成させる!一進一退の展開が非常に面白い。集団競技であることを意識した相手チームの隙を狙う展開は原作漫画版の前半を思わせる。最終回、ささやき戦術に動じず一本釣り打法で蛮が出塁。続けて八幡も打撃妨害の借りを返すとばかりに燃え痛烈なヒットを放ち巨人勝利。最後まで蛮の冷静さを崩せなかった野村監督は敗北を認める。だが日本シリーズはまだ決着していないのだ。

 


第42話「爆発!長島流喧嘩野球」

脚本・コンテ:出崎

 

「バットよ!!俺の怒りの全てをお前に託そう!!俺はお前を振るだけにしよう。後はお前が勝手に怒りをボールにぶつけてくれ!!

 

日本シリーズ第二戦を終えて今回は試合外のエピソードとなる。実質の主役は長島。今となっては貴重な当時の映像も盛り込まれた単発回として楽しめる内容である。何故か長島の一人称が「ワシ」なのが可笑しい。川上監督も「長島」ではなく「シゲ」と呼んでいる。

大阪の繁華街を歩く長島、王、柴田、八幡、番場の五名。第二戦の勝利の立役者となった蛮を讃える様子が微笑ましい。自由行動となり八幡と蛮は三人と別れるが、酔った南海ファンの集団に絡まれてしまう。この連中が悪質かつ執拗で見ている側も気分が悪い。南海が負けたことを根に持ち挑発を繰り返し、あわや乱闘となるが飛びかからんとする蛮を八幡が必死に抑える。「巨人軍の選手が喧嘩しているぞーー!」群集の声を耳にした長島たちがかけつけ、柴田が走り蛮を宥めるが怒りの静まらない蛮は酔っ払いたちに向かって走る!だがそれを長島が制止、腹部への一撃で蛮は気絶。長島は蛮を抱え、酔っ払いたちに売られた喧嘩の決着は明後日の日本シリーズ第三戦で番場が必ず着けると言い立ち去るのだった。

翌日、移動中の新幹線内で長島は蛮に語る「長島流喧嘩野球」を。舞台は8年前、昭和40年4月12日後楽園スタジアム・・・中日のエース柿本の内角への鋭いシュートに怒りを覚えた長島は報復とばかりに投手返しで柿本を襲う!この行為はその後チームを巻き込んだ乱闘にまで発展し長島は川上監督に叱責される。ここで当時の映像が挿入されるが真っ先に暴れているのがやはり金田であった。川上監督のプロ野球に対する真摯な思いを知り、自らの考えを改めようとする。しかし怒りをどこにぶつければ良いのか?その答えを見つけられぬまま舞台は3年後、昭和43年9月18日、巨人阪神22回戦・・・超満員のスタンドでこの試合に勝った方が首位に立つという一戦である。阪神の投手、バッキーの投じたボールは二球連続で王の頭部近くへ!両軍入り乱れる乱闘の中、長島は両手を後ろに組み耐える・・・バッキーは退場となり権藤と交代、再び打席に立つ王。だが権藤の投げた球はすっぽ抜け頭部に死球!!球場は大荒れとなり長島は叫ぶ、この怒りをどうしたら良いんだ!その時、ついに彼は悟る。「その怒りを全てボールにぶつけるのだ!」燃えに燃えた長島の一打はスタンドへ一直線に飛び、球場の殺伐とした雰囲気を一掃するのだった!!この瞬間、怒りの活かし方を長島は理解したことを聞かされた蛮は喜怒哀楽を全てをプレーにぶつけると決意、南海との第三戦に挑む!

 


第43話「決戦、日本一をめざせ!」

脚本:安藤豊弘・出崎哲 コンテ:出崎

 

「番場の魔球と王のホームランで決まったV9!もっとも巨人らしい勝ち方と言えよう。

 

前回の長島主役回に続き、今回の主役は王貞治である。

昭和48年10月31日、日本シリーズ第四戦当日からスタート。巨人軍宿舎にて蛮は第三戦で完投勝利した事を報じる新聞を読んでいる。第三戦が描かれなかったのは勿体ない。「打ってはホームラン」「ワンマンショー並の大活躍」・・・新聞の見出しを読む限り、南海を寄せ付けない活躍だったようである。八幡を見送り蛮は宿舎で眉月と大砲が出演するテレビ番組「日本シリーズをこう見る」を視聴。サムライの活躍を称える二人だが、眉月は王の無気力なプレーを厳しく批判。確かに日本シリーズで不振の続く王だが、蛮はそんなことはないとテレビの前で叫ぶ!

場面は変わり後楽園球場。眉月の発言が気になった蛮は球場へ駆けつけた。確かに王は絶好球も打つ気配がなく観客からも野次が飛ぶ・・・第四戦も巨人の勝利となり、日本一まであと一勝となったが納得いかない蛮は王に問う。何故なのかと。話を逸らし立ち去ろうとする王であったが、三冠王を達成した事で日本シリーズを軽視しているとまで言われ、これから彼の向かう先へ蛮を同行させる。見覚えのある場所に到着した蛮は驚く。そこには「吉田医院」の看板があった。かつて蛮が大砲に敗れ負傷した際の入院先である・・・実は腰を痛め出場もままならない状態であった王。だが長島を欠いた今、自分が抜ける訳にはいかない!四番として打席に立てば南海も警戒する。そのために耐えてきたのだ。痛み止めの膏薬を渡され、あと一戦に挑む王!蛮は自らを恥じる。やはり王は偉大な三冠王であったのだ。だが膏薬の匂いに野村監督が気付く展開は面白い。今回は南海側の描写は少ないが、誰よりも早く王の不調の原因を見抜き、王を打たせ、走らせる戦術に切り替えるのはさすがである。南海の攻撃の際も一塁の王が狙われ、たまらず蛮は川上監督にリリーフを申し出る。川上監督は既に王の異変に気付いていた。打席には野村監督、いかに彼でも掠ることも出来ぬ分身魔球であれば打ち取れる。王を救えと指示を受けたサムライはマウンドに立つ!分身魔球以外は投げないと連続三振に打ち取るが、七回、八回と連投の疲れを野村監督は見逃さず、分身が消えた瞬間を狙い打球は王の方向へ飛ぶが蛮はそれを素手でキャッチ!爪が割れる描写は痛々しい。もうベンチで休めと言う王に対し、「休む時は一緒だぜ。それにはこの回を抑え、次の回で一点をとりゲームを決めることだぜ!」と笑う蛮。血染めのボールで南海打線を封じ、九回裏でついに王がホームランを放つ!!不調に苦しんだ王が最後に決めるのは熱い。こうして巨人は日本シリーズを制したのである。前半の不調の描写から後半の畳みかけるような逆転劇と見所の多い回であった。

 


第44話「大リーガーの凄い奴」

脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「フフフフ・・・ついに掴んだぞ。分身魔球の弱点をな!!

 

ついに最終三部作へ。原作漫画版から離れたアニメ版独自の物語は果たしてどんな結末を迎えるのか?

日本シリーズを終えた巨人。後楽園球場では「巨人軍ファン感謝デー」が行われていた。「分身魔球対川上監督」が予定されていたが、その川上監督の姿が見えない。長島は「例のこと」で呼び出されたのではないか・・・?と口にする。その予感は当たり、ビッグニュースが飛び込んで来た!本場大リーグの王者、アスレテックス(第19話で登場したアスレチックスを架空の球団名に設定変更)が巨人軍からの対戦申込を受諾、日米の王者が激突することになったのだ。

そして正力オーナーの口から正式に「日米ワールドシリーズ」認定されたことがマスコミに伝えられた。第19話で川上監督が語った巨人軍の大目標がついに実現。これは原作漫画版でも触れているが実現することなく完結している。アニメ版の舞台は昭和48年のV9達成後であるためこの展開もスムーズである。(昭和49年が舞台の原作漫画版最終章は史実と絡む関係上、ペナントレースの勝敗こそが最重要であり、ワールドシリーズへの展開は不可能だろう。)

そして来日した全米王者・アスレテックス!かつてない「デカイ敵」が登場した!空港にて各選手を歓迎する巨人ナインだが、蛮が花束を渡した相手は意図的な強い握手で威嚇する。それに対し左手での握手を要求する蛮。利き腕でやり返すという単純な動機だが、これはアメリカでは挑戦を意味するものである。空港にやってきたウルフからその男の名が「ロジー・ジャックス」であると知る蛮。今シーズンでホームラン52本、打点177で二冠王、更に最優秀選手賞にも輝いた恐るべき強打者である。

そして迎えた第一戦、ワールドシリーズと同じメンバーでオーダーを組んだアスレテックスに対し負傷の長島を欠く巨人は明らかに不利であり、ジャックスの一打はバックスクリーンの時計をも破壊する。試合は一方的な流れとなり、九回裏で王の放った一打もジャックスの超人的プレーに阻まれ巨人は敗北。観客席にいるウルフにジャックスは日本球界はお前が拘る程の実力はない、一緒アメリカに帰ろうと声をかける。だが彼はそれを否定、「ヤツ(蛮)を倒せたらな」と返す。激闘を繰り広げたウルフならではの台詞である。そして第二戦、蛮の出番が来た。サムライ・ボーイの実力を軽視していたジャックスであったが分身魔球の変化に驚愕!三振に打ち取られる。見事アスレテックス打線を封じ、巨人リードのまま試合は進みついに九回裏、最後の打者はジャックスとなった。まず縦の分身魔球に対し、ミット前で上下にバットを振る動作を繰り返し当てようとするも失敗、次は垂直にバットを構え、縦一直線の変化に対し実体も幻も全て打つことを試みるがバットが折れてしまう。ここでジャックスは気付く、縦分身を「上」から見た時、それは「点」にすぎないと。そして三球目、上段に構えストライクゾーンを通過するタイミングでついにミートに成功!だがボールは地面に食い込み、あえなく一塁アウトとなるのだった。しかし・・・弱点に気付いた彼がこのまま終わる筈がないのだ。

 


第45話「大決戦、日米ワールドシリーズ」

脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

「二度と同じ敗北はしない。これが大リーガーのプライドだ。

 

日米ワールドシリーズ第二戦で勝利した巨人は勢いに乗り、第三戦も勝利した。多摩川グラウンドでジャックスを退けた蛮と八幡が「もう敵はいない」と大口を叩きながら投球練習していると、いきなりバットが投げ込まれウルフが現れる。一々登場の仕方が変な奴だ(笑)

柵の上に立ち「ガキのキャッチボールをしている暇はない」と二人に忠告するウルフ。彼は蛮の本心を見抜いていた。ジャックスは分身魔球攻略のヒントを掴んでおり、その不安を紛らわそうとしていると。図星をつかれた蛮はムキになるが、大いなる敵は牙を既に剥いているのだ。毎年大物ルーキーは現れる、だが王、長島レベルの選手は別格であり、ジャックスもそうであると断言しウルフは立ち去る。

場面は変わり、アスレテックスの主要選手は蛮の歴代魔球の映像を見て対策を練る。「ハイジャンプ魔球」「エビ投げハイジャンプ魔球」「大回転魔球」そして「分身魔球」・・・映像を見たジャックスの反応が面白い。ハイジャンプと大回転には恐れる必要なしといった様子、やはり分身魔球攻略が対番場の鍵を握ると判断したジャックスは居合わせたウルフを誘い、「古武道々場 精道館」へ。いきなり道場に(しかも敵が)訪れる展開には驚く。原作漫画版で蛮が空手道場に通うエピソードがあるが、アニメ版ではジャックスが師範の投げた鉛の入ったヌンチャクを打ち返すという過激な特訓が行われる。ヌンチャクの動きは分身魔球(縦分身)に近い。まずバットを「通常に」構えるがその勢いに弾き飛ばされる。続けてウルフが挑むもバットを離さなかったため身体ごとフッ飛ばされる。ならば「縦分身を正面から見たときの(ボールで構成された)縦の線を全て同時に叩く」・・・それを実行し成功させてしまうジャックス!恐るべき男である。

そして第四戦のときが来た。先発はサムライ番場蛮!スタンドには眉月と理香がいた。蛮の応援に来ている筈が分身魔球の攻略法について考えてしまう眉月・・・ウルフも眉月もジャックスの実力は自分よりも上であると認めているようである。格が下がるような描写ではないが、普段の彼らを知るだけに少々意外だ。(蛮が長島、王を別格視しているようなものか?)

好投の蛮であったが、奥多摩にいる大砲の斧が折れ、土佐にいるユキのサンダルの鼻緒が切れる不吉な描写が。そして二回表、再びジャックスとの対決となった。僅か二日前に打ち取ったMr大リーガーだが、打席に立つ彼は異様に落ち着いている。不安を感じた八幡は外角外れに「横分身」を要求、そのとき川上監督と八幡は気付いた。投球直前に「左手の握りが返った」ことを!横分身と分かりウルフの行ったバットを短く持つ打法に切り替えファウルになるが「縦分身」を狙っていることは明白、チームの勝利のため敬遠を指示する八幡だが男の勝負に拘る蛮の気持ちを王は支持、真っ向勝負で挑むこととなる。だが渾身の縦分身をジャックスは逆手で構えた打法で完璧に捉え、打球は場外に消えた・・・次回最終回。

 


第46話「世界に輝く侍ジャイアンツ」

脚本:金子裕 コンテ:出崎

 

「ああ!戻るとも!!この左腕と侍魂だけを武器に本当の腹破りを見せてやるぜ!!

 

昭和47年日本シリーズ中における川上監督の独白から始まった物語もいよいよ最終回。巨人のサムライの物語はいかなる結末を迎えるのか?

ジャックスに分身魔球を完璧に打ち込まれた蛮は戦意喪失し自らマウンドを降りてしまった。今までも魔球敗北後に沈む描写はあったものの今回は様子が異なり、自信を打ち砕かれ闘争心を失ってしまったかのような表情を見せる。物語前半のピンチをピンチとも思わぬ豪快さは回が進むごとに微妙に変化し、原作漫画版に近付いた印象である。これは好みの分かれる所ではあるが、前半と後半では主人公の置かれた状況は当然異なり、攻略困難な強敵を前にして前半と同じ調子という訳にもいくまい。蛮自身も成長したこともあり自然な流れと言えよう。

前回の舞台は日米ワールドシリーズ第四戦であったが、今回は第七戦。描かれなかった二試合は第六戦を堀内が完投したことのみ語られる。この第七戦で勝った方が世界王者になるのだ!双方とも総力を挙げて決戦に挑む様子が描かれ、主力選手の大半がベンチ入りとなるが、蛮は姿を見せずにいた・・・八幡が心配する中、場面は変わり多摩川グラウンド近くに蛮はいた。思いつめたような固い表情である。そこに大砲、続けて眉月が現れ、更にウルフも現れた。(実はこの三人が同時に画面に登場するのは初。)彼らの目的はただ一つ、自分たちと血みどろの死闘を繰り広げた巨人のサムライが最強の敵・ジャックスに臆せず立ち向かうよう奮起を促す為だ。三人に気付いた蛮が「君たちは・・」と口にするのは普段の言動からは想像出来ず違和感を覚えるが、ライバルたちの言葉にも心に火が着かない描写から魔球の開発と敗北の繰り返しに疲れを感じているようにも見える。ここは性格設定云々ではなく好意的に解釈したい。

言われるがまま眉月の車に乗り、後楽園球場を目指す・・・逃げ出したい筈が何故か車に乗ってしまう自分の気持ちが理解出来ずにいる蛮だが、到着後、やはり立ち向かう術はないと立ち去ろうとする。そこに現れる理香、蛮の到着を待っていた様子である。弱気の蛮を平手打ちし励ます理香。今まで何処か達観した雰囲気で本心の読めないキャラクターであったが、ここで敢えて明るく振る舞い「強い蛮ちゃんが好きよ!」と話すのが健気である。

そして理香は蛮を近くの遊園地へ連れて行き、二人は観覧車へ乗る。後楽園球場が見えてきたとき彼女は話す、蛮の父親「昭和のモリ師丹治」のことを。亡き父はどんな気持ちで大クジラに立ち向かったのか・・・?ここで蛮はハッとなる。父に勝算なんてものは無かった。ただ一本のモリと侍魂で立ち向かったのだ!これは原作漫画版において野性味が薄れていた蛮に奮起を促した描写と意味合いは近い。理香は後楽園球場を指し、あらためて問う「あれは何に見えて?」と。奮い立つ蛮は叫ぶ「あれはでっけぇクジラよ!!」・・・序盤で語られた「でっかいクジラ」「デカイもの、馬鹿強いもの」に対する対抗心がここで甦る流れは熱い!!

試合は一進一退の攻防戦となり、長島の会心の一打が飛び出し1 点リードするも、九回裏二死満塁のピンチに。そしてバッターボックスに立つのはジャックスである。マウンドの小林は既に限界が来ているものの、代わりの投手はもういない・・・苦しげな表情の川上監督、だがベンチに向かって何者かが走ってくる音が!!その足音が蛮であると八幡だけが気付くのは嬉しい。そして現れたサムライ番場蛮!!ようやくの登場である。完敗を喫した怪物へ策もなくどう挑むのか?

スタンドではライバルたちが見守る、地元土佐では母キクと妹ユキが、そして理香は・・・彼女は空港にいた。実は親の薦めもあり留学が決まっていたのだ。そのことを言い出せないまま蛮の前に現れ、侍魂を甦らせ去っていく・・・「野球ではなく蛮に惹かれていたのではないか?」と自らに問い、そんな自分が何故海外に行く気になったのか分からないと独白するシーンは切ない。

 分身魔球を攻略された今、蛮に出来ることは過去の魔球をも駆使して全力で挑むことのみ!久々にハイジャンプ魔球を投じるもののジャックスには通じず打ち込まれる。結果はファウルで命拾いしたものの、映像確認のみで対策を練り、それを実行出来るとは恐るべき実力者である。続けてエビ投げハイジャンプ魔球、大回転魔球と全てファウル、初対決故に微妙なタイミングの差で本塁打とはならなかったものの同じ手はもう通じない。さらに使用する筋肉が異なる各魔球を全力で投じた蛮は全身に激しい痛みが走りマウンドに倒れこむ・・・全力で挑んだ蛮を責める者などいない、もう下がるんだと話す八幡だが、それを拒否し立ち上がるサムライは天を仰ぎ呟く。「父ちゃんよ・・俺はとうとう父ちゃんの後を追ってここまで来ちまった・・教えてくれ!父ちゃんはでっかいクジラが本当に怖くなかったのかい?」

その時「太陽の眩しい光」で目を閉じた蛮は瞼に残る「残像」から何かに気付く・・・まだ試すべき手が一つ残されていたのだ。

 

運命のときが来た。蛮は分身魔球の体勢に入りボールを握り潰した後、上空へ飛び上がった!更に空中でそのまま大回転!すると全身から無数のボールの残像が現れた!!分身魔球を遥かに上回る凄まじい変化を見せた合体魔球にジャックスは驚愕、我武者羅にバットを振り回すも成すすべもなく打ち取られるのだった。

おそらくは一度限りの使用、これまで編み出した全ての魔球の特徴を併せ持つ合体魔球のインパクトは絶大で、まさに最終回にふさわしい大技である。投球動作開始からの流れは震える程格好良く、カタルシスを感じる決着となった。

こうして日米ワールドシリーズは巨人が勝利した。最優秀選手として選ばれたのは我らが番場蛮。それを祝福する眉月、ウルフ、大砲、ジャックス、そしてキクとユキ、旅立つ理香はラジオでそれを知り涙を流す・・・・。

「巨人のサムライ」から「世界のサムライ」になった蛮。だが野球の道はここで終わったわけではない、これから尚厳しい野球道が待っている。サムライよ!万丈の山がいくつ阻もうとも、千仞の谷に何度落ちようと前へ進むのだ。番場蛮、本当におめでとう!

 

川上監督の言葉で本作は終了する。実にストレートで、文句なしのハッピーエンド。原作漫画版とは全く異なる内容となったが、その明るい作風と勢いのまま最後まで駆け抜けた感がある。アニメ版はこの結末で大正解だろう。

分かりやすくスピーディな展開、豪快な魔球に魅力的な主人公、この作品が長く愛されるのも納得である。約一年という放送期間の中で原作漫画版の物語を上手く再構成しているが、限られた話数故に原作ほどの作品世界の広がり、大河的な展開は見られなかった点は惜しい。が、分身魔球登場からの怒涛の展開は逆に原作に影響を与えたほどであり、もう一つの番場蛮の物語として大いに評価すべき作品と言えよう。世界に輝く侍ジャイアンツの物語はまだまだ続くのだ!

 


放送第47話「友情」

※第14話「殺生河原の決闘」の改題再放送

脚本:谷あさこ コンテ:近藤英

 

「侍ジャイアンツ」は1974年9月15日放送の第46話で完結となったが、月内は放送が続き、9月22日は第14話のサブタイトルを変更したものを放送している。この回が選択された理由は不明。八幡の葛藤と蛮との友情を描いたドラマ的にも見応えのある回である。


放送第48話「激突」

※第19話「インディアン魂対侍魂」の改題再放送

 脚本:金子裕 コンテ:富野喜幸

 

前回に続き、9月29日は第19話のサブタイトルを変更し放送された。「侍ジャイアンツ」本放送時の最終放映回は本話ということになる。ウルフ・チーフとの対決を描く娯楽性の高い回であった。


劇場版「侍ジャイアンツ ほえろバンババン」

脚本:七条門 コンテ:矢吹徹

 

1973年12月20日公開

併映:「キングコングの逆襲(短縮版)」「ウルトラマンタロウ 燃えろ!ウルトラ6兄弟」「山ねずみロッキーチャック がんばれチャタラー」「エースをねらえ! テニス王国のシンデレラ」「科学忍者隊ガッチャマン 電子怪獣レンジラー」

 

1973年冬季「東宝チャンピオンまつり」プログラムピクチャーの一本として第1話が公開された。作画、演出とも高いレベルで纏められており、劇場公開されるのも納得のセレクトである。

 


劇場版「侍ジャイアンツ 殺生河原の決闘」

脚本:谷あさこ コンテ:近藤英輔

 

1974年3月21日公開

併映:「ゴジラ対メカゴジラ」「新造人間キャシャーン 不死身の挑戦者」「アルプスの少女ハイジ」「ウルトラマンタロウ 血を吸う花は少女の精」「ハロー!フィンガー5」

 

1974年春季「東宝チャンピオンまつり」プログラムピクチャーの一本として第14話が公開された。何かと露出の多い14話が劇場でも公開。メインはもちろん新作東宝怪獣映画「ゴジラ対メカゴジラ」である。