「関連作品」解説

同原作者の手による「侍ジャイアンツ」のルーツ的作品や世界観の繋がりを感じさせる作品を紹介。

 

必殺のクロスカウンター

●「必殺のクロスカウンター」

 

漫画:井上コオ先生

週刊少年ジャンプ 1969年12月15日(第26号)掲載

 

作品解説 ※文字をクリック

 


モーレツ!巨人

●「モーレツ!巨人」

 

原作:梶原一騎先生

作画:石井いさみ先生

報知新聞 1969年11月4日~1970年3月31日連載

全145回+番外編1回 

 

【物語】

昭和44年、日本シリーズ五連覇を目指し巨人軍は多摩川グラウンドでの練習に熱が入る。そこに一人の青年が突然乱入し投球練習中の球を打つ!「さすがはプロの球だ」挑発的な言葉を残し立ち去った彼の名は千波竜介(せんばりゅうすけ)「モーレツな巨人よりもっとモーレツな男がここにいる」と豪語し巨人以外の球団入りを希望していたが、巨人は敢えて竜介を指名、反抗的な態度を崩さない彼だが、やがて巨人の掲げる「日米ワールドリーグ戦で勝利し世界一となる」大目標を知り自らの小ささを痛感、ひたむきに野球に取り組むようになる。果たして王、長島に続く五番打者として打撃開眼する日は来るのか?

 

【解説】

本作は1969年に雑誌ではなく報知新聞にて連載された。毎回一頁に雑誌二頁分の原稿が掲載されている。※1970年1月1日のみ二頁掲載(雑誌四頁分)で番外編「千波竜介の初ユメ」が掲載されている。

『衰えつつある巨人軍に破天荒な主人公が入団し活躍する。その背番号は死を意味する「4」である』という設定はこの作品で生まれた。後の「侍ジャイアンツ」に繋がるルーツ的な作品と言えよう。主人公の性格は意外とストイックでモーレツと呼ぶには(後発の作品を知る今の視点では)少々違和感があること、並行して描かれるヒロイン・芦原涼子との交流の印象が強いこと(特に終盤は涼子の視点で物語が進み、竜介より彼女自身のエピソードがメインと言っても差し支えない)、作中で描かれる期間がオフシーズンのみでペナントレースでの活躍が描かれなかったことで盛り上がりに欠ける内容となってしまったのは残念だが、本作で生まれた魅力的な要素は後続作品に引き継がれることとなる。

 


野獣の弟

●「野獣の弟」

 

原作:梶原一騎先生

作画:石井いさみ先生

中一コース 1970年4月号~1971年3月号

中二コース 1971年4月号~1972年3月号連載 

全24回 ※各回の頁数から推測

 

【物語】

昭和45年二月上旬のある日、ミスタージャアンツ・長島茂雄は来る宮崎キャンプに向けて多摩川グラウンドで調整中であった。そのとき、打球が幼い子供のいる方向に飛んでしまい、あわやという所で飛び出してきた青年がキャッチ!礼を言う長島だが、青年は礼ならプロの打者と対決してみたいという。結果はかすりもせず惨敗となるが、長島は直感的に彼は自らの後継者になり得る存在ではないかと後をつける。青年の名は海童猛巳、そのバッティングの中に限りない野生を見た長島は猛巳を「野獣の弟」としてスカウト。徐々に衰えつつある巨人を救うミスタージャイアンツの後継者に成長出来るのか?猛巳の猛特訓が始まった。

 

【解説】

本作は中学生を対象とした雑誌に連載された。背番号は「4」であること、冒頭で巨人の練習中に主人公が現れる点など、「モーレツ!巨人」の要素が本作に反映されている。主人公の年齢や長島を兄と慕う姿は読者が事実上中学生限定であることを意識したものと思われる。先に発表されている「巨人の星」や「モーレツ!巨人」より対象年齢は低めに設定されており、複雑な心理描写は避け、シンプルなストーリー展開となった。「野獣」という表現が多用されるが主人公はまだ幼さを感じるキャラクターである。だがそこは梶原作品、見事巨人一軍の一員となったものの、最終回では長島に続き大活躍とせず敢えて凡打とし、これからの成長を予感させる結末となった。やや特殊な場での作品発表となったことが影響したのか本作でも魅力的な要素を活かしきったとは言い難く、「侍ジャイアンツ」で三度挑戦することとなる。

 


新巨人の星(コミカライズ版)

●「新巨人の星(コミカライズ版)」

 

原作:梶原一騎先生 / 川崎のぼる先生

作画:井上コオ先生

月刊テレビマガジン 1977年10月号~1978年08月号連載

増刊テレビマガジン 1978年01月増刊号/1978年04月増刊号掲載

全11回+番外編2回

 

【物語】

魔球・大リーグボールを生み出し「巨人の星」となった星飛雄馬が、その魔球の多投による左腕の破壊と引き換えに完全試合を達成し球界を去ってから5年後・・・

巨人軍は長島茂雄新監督のもと、球団史上初の最下位の屈辱にまみれていた。そんなある日、東京近郊で行われていた草野球の試合中に有料で代打を請け負う謎の男が現れる。

彼は草野球レベルの投手から最低でもシングル安打を放つ力量を具え、四球で歩かされれば俊足と苛烈なスライディングで100%の盗塁成功率を誇った。その有料代打屋の正体が星飛雄馬であるとつきとめた親友・伴宙太は彼の真意を知り巨人復帰に向けて全面協力、やがて飛雄馬の身体に秘められた「大どんでん返し」の正体が判明、「右腕投手」としての奇跡の復活を目指すことになる。

果たして飛雄馬は最下位の長島巨人を救うことが出来るのか?

 

【解説】

「新巨人の星(コミカライズ版)」は1977年(昭和52年)に約一年間放映されたアニメ版(第一期)のコミカライズ作品である。全11回+番外編2回で構成。

週刊読売(読売新聞社)で連載された原作漫画版は、かつて少年時代に正編「巨人の星」を読んだ大人の読者を対象とした続編であったが、アニメ版は放映時におけるメイン視聴者層である子供を意識し、難解な表現、複雑な心理描写等は若干アレンジされた。本作はそのアニメ版をベースに児童誌で連載されている。

作画は「侍ジャイアンツ」の井上コオ先生が担当。本作と「侍ジャイアンツ」は直接の繋がりは無いものの、長島、王等の実在のキャラクターは当然ながら共通しており、設定的な矛盾も無いため所謂パラレルワールド的な作品世界の繋がりを感じさせる。(番場蛮が去ったのが1974年で本作は翌1975年、巨人軍が球団史上初の最下位となった年からスタート、行方不明となっていた星飛雄馬が突然現れる。)例えるなら登場人物の一人が番場蛮について語ったり、飛雄馬が八幡太郎平やユキと出会っても違和感なく、「侍ジャイアンツ」世界と「巨人の星」世界とのリンクを想像すると楽しい。

各回の頁数は決して多くはないものの上手く纏められており、オリジナルキャラクターも登場し、原作漫画版、アニメ版とも異なる本作独自の世界観を確立した良作である。

残念ながら本作は単行本化されておらず、このまま埋もれてしまうのはあまりにも惜しい。「星飛雄馬と番場蛮が公式に同一のタッチで描かれる価値」は実に大きく、今後刊行されることを期待したい。

 


巨人のサムライ炎

●「巨人のサムライ炎」

 

原作:梶原一騎先生

作画:影丸譲也先生

週刊読売 1979年05月20日(第21号)~1980年08月17日(第34号)連載

全61回

 

【物語】

「長島巨人V3ならず!」

優勝を逃し、江川問題で巨人軍への批判が高まる昭和54年春、マスコミの注目を集める怪物・江川卓の投球練習中に突如乱入しボールを打ち返した謎の青年。その大胆さにヒラメキを感じた長島監督はフリースカウトである沢田修に調査を命じる。彼の名は「水木炎」類まれなる野球センスを持つが、その性格の荒さ故に暴力沙汰を繰り返し高校球界を追われ、今はその日暮らしの無気力な日々を送っていた・・・

だが僅かな金銭目当てのために江川の投球練習に乱入したことで彼の運命は大きく変化し始める。長島監督は「現在の巨人にサムライの血を導入したい。V9戦士は老いゆくだの、若手も優等生にまとまりがちだの、そんな世評を理屈抜きに一刀両断してのけるサムライを!」と考えていたのだ。

炎は突然現れた「巨人の星」星飛雄馬に投打とも完敗、更に星のライバルである花形満、左門豊作にも実力差を見せつけられたことで心に火が着き、再び野球への情熱を取り戻す。「巨人のサムライ」誕生なるか?

 

【解説】

「巨人のサムライ炎」は週刊読売にて連載された前作「新巨人の星」完結から約一カ月後に連載スタートした「姉妹編」である。

物語の世界観は前作と同一とされるが、作画担当者の変更で雰囲気は大きく異なり内容的にも続編として作られてはおらず、この二作を同一世界と解釈することについては解釈が分かれる。但し前作が複雑な事情により内容的に未完となっているため、本作の中で描かれる前作キャラクター達のエピソードによって物語を補完することが可能である。

本作の主人公・水木炎の荒っぽい性格、長島監督の台詞「現在の巨人にサムライの血を導入したい」など「侍ジャイアンツ」を思わせる設定が随所に見られるが、その内容は全く異なり、所謂リメイク作品とは異なる。物語冒頭で語られるように巨人は優勝を逃しており、「侍ジャイアンツ」でも度々描かれた「王者巨人の弱体化」は更に進んでいる状況である。

全四章で構成され、第一章で所謂新旧主人公の交代劇が描かれた後、本格的に水木炎を主人公とした展開となる。連載は史実とほぼ同時進行で進み、巨人は1979年(昭和54年)は5位、翌年は3位、そして長島監督は解任となる非常に厳しい状況。水木炎は番場蛮や星飛雄馬が度々見せるナイーブな描写は少なく、明るさと同時に大人を対象とした週刊誌連載ならではのダークな一面も見せる面白いキャラであるが、物語の展開には苦労を感じさせる作品であった。本作は電子書籍化されているものの、残念ながら第三章の途中までの収録であり完全版の刊行が待たれる。